2012/11/26

総合 –EUウオッチャー

独上院、スイスとの租税協定を否決

この記事の要約

ドイツの上院に当たる連邦参議院は23日、ドイツ政府が昨年スイスと締結した租税協定を否決した。これにより当初予定していた来年1月1日付の発効は事実上不可能となった格好だ。政府は今後、下院(連邦議会)と上院の両院協議会を招集 […]

ドイツの上院に当たる連邦参議院は23日、ドイツ政府が昨年スイスと締結した租税協定を否決した。これにより当初予定していた来年1月1日付の発効は事実上不可能となった格好だ。政府は今後、下院(連邦議会)と上院の両院協議会を招集できるものの、連邦参議院で過半数票を握る野党は協定内容の変更を強く要求。スイス側では変更を一切拒否しているため、最悪の場合は協定が成立しない可能性がある。

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ドイツ政府は昨年9月、スイスとの租税協定に調印した。スイスの銀行を利用したドイツの納税義務者の脱税を防止することが狙いで、過去の脱税についても追徴課税が行われる。

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ドイツでは所得税などの税率が高く、これを嫌った富裕層は租税回避地(タックスヘイブン)であるスイスやリヒテンシュタインの銀行に資産を隠匿してきた。同協定はこうした手口による脱税をできなくするもので、ドイツ在住者がスイスに持つ預金には今後、ドイツ国内の金融資産と同じ税金(金融資産税と連帯税で税率は計26%強。キリスト教徒であれば教会税も加わる)を適用する。

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スイスに銀行口座を持つドイツの納税義務者の氏名は独当局に提供されない。これによりスイスは「銀行の秘密」(顧客に関する情報を守秘する義務と外部への情報提供を拒否する権利)を今後も維持できる。

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野党の社会民主党(SPD)や緑の党はスイスの銀行に強い不信感を持っており、同協定が発効しても盲点を突くなどしてスイスの銀行が脱税ほう助を続けるとみている。また、協定が施行されると脱税容疑者に関する情報の購入が違反行為とされ、脱税を有効に取り締まれなくなる恐れがあると懸念。さらに、脱税者の匿名性が維持されることも問題視している。

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