2012/12/3

総合 –EUウオッチャー

経済通貨統合深化の青写真発表、ユーロ共通予算・債券など=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は11月28日、EUの経済通貨統合(EMU)の深化に向けた青写真を示す報告書を発表した。欧州の債務危機を招いた反省を踏まえ、財政統合を進めることを主眼としたもので、短・中・長期の3段階でユーロ圏の共通予算創設、 […]

欧州委員会は11月28日、EUの経済通貨統合(EMU)の深化に向けた青写真を示す報告書を発表した。欧州の債務危機を招いた反省を踏まえ、財政統合を進めることを主眼としたもので、短・中・長期の3段階でユーロ圏の共通予算創設、共同債券発行を含む財政構造改革を断行する方針を示している。

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「深く純粋な経済財政統合への青写真」と題した報告書は、EMUを深めるためには、経済・財政政策は各加盟国が選択するものより、EUレベルで調整、承認された政策が上位にあるべきとして、各国の主権を犠牲にしてでも一元化を進める方針を表明。6カ月~1年半以内の短期、1年半~5年の中期、5年以上の長期に分けて、それぞれ取り組むべき課題を挙げている。

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短期は、「銀行同盟」創設構想の第1段階となる銀行監督の一元化など、すでに合意済み、または実施に移されている措置の実行が中心。EUの中期予算とは別に、経済の構造改革を必要とするユーロ参加国に金融支援を行うための基金を創設するという新構想も盛り込んだ。いずれもEU基本条約の改定を必要とせず、比較的迅速に実現できるとしている。支援基金については、対象国が欧州委、ユーロ圏各国と構造改革の詳細、工程表について合意し、その実行を「契約」の形で約束することを求める。

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中期では、単独での資金調達が困難となっているユーロ参加国を支援するため、ユーロ圏17カ国が共同で債券を発行する「ユーロ債」構想の実現や、ユーロ参加国の債務を減らし、金融市場の安定を保つための「債務償還基金」の創設を打ち出した。また、ユーロ圏の予算共通化に向けた地ならしも盛り込んだ。ユーロ債については、当初は期間1~2年の短期債の発行から着手するとしている。

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長期では、ユーロ共通予算の創設、銀行同盟の最終段階完了によって、経済通貨同盟を完成させるとしている。

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欧州委のバローゾ委員長は記者会見で、中・長期の課題はEU基本条約の改定が必要となるが、EMUの将来のため、実現が必要と強調。さらに、「ユーロ圏がEU全体よりも、迅速かつ深く統合を進めるべきだ」と述べた。これは、EU統合に積極的な国と、消極的な国の2グループに分かれてでも統合深化を進めるという「“二速度欧州(Two Speed Europe)”」と呼ばれる概念を容認する発言で、大きな波紋を広げる可能性がある。

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同報告書の提言は、12月13、14日に開催されるEU首脳会議で検討される。

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