2012/12/3

総合 –EUウオッチャー

ユーロ圏が対ギリシャ融資再開を決定、債務削減策でようやく合意

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は11月27日、債務危機に陥っているギリシャに対する融資再開の条件となっていた同国の債務削減策で合意した。これにより凍結されていた次回融資が12月13日に実施されることが決まり、ギリシャは当面、デフォルト […]

ユーロ圏17カ国は11月27日、債務危機に陥っているギリシャに対する融資再開の条件となっていた同国の債務削減策で合意した。これにより凍結されていた次回融資が12月13日に実施されることが決まり、ギリシャは当面、デフォルト(債務不履行)の危機を回避できる目途が立った。

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ユーロ圏は26日に財務相会合を開き、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事を交えてギリシャの債務問題について協議。13時間に及ぶ討議の末、27日未明に合意に達した。

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ギリシャはEUとIMFから第1次、2次合わせて総額2,400億ユーロに上る金融支援を取り付け、これまでに約1,500億ユーロの融資を受けた。しかし、5月の新政権発足に伴って、支援の見返りとして旧政権が約束した財政再建計画の見直しが浮上したため、6月から融資がストップしている。

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ギリシャ政府は融資再開に向けて大幅な見直しを断念し、135億ユーロ規模の財政緊縮策実施に向けた法案が11月8日に可決。11日には厳しい緊縮策を盛り込んだ2013年度予算案も議会を通過し、財政再建計画の面ではハードルを越えた。しかし、ユーロ圏では同国の景気低迷の深刻化を受けて、すでに決まっていた債務圧縮策の実施が非現実的となり、債務問題の先行き不透明感が強まったことから、圧縮の思い切った見直しが新たな条件として浮上。各国間やユーロ圏とIMFとの意見の相違により調整が難航していた。

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11月になって3回目となる今回の協議では、2年後に国内総生産(GDP)比190%に達すると予想される累積債務を2020年までに120%まで圧縮するという約束について、目標数値を124%に緩和することで合意した。ただし、これに反発していたIMFを納得させるため、2022年までに110%まで削減するという目標を設定した。ユーロ圏は単年の財政赤字をEUの財政規律で上限となっているGDP比3%以下に抑える期限を2014年から16年に延長することで合意済み。これに続いて累積債務の削減条件も緩和されることになる。

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一方、大きな焦点となっていたユーロ圏各国による同国向け債権の一部放棄はドイツ、オランダなどの抵抗で見送られたものの、◇すでに実施された第1次支援(総額約1,100億ユーロ)に基づく2国間融資の金利を1ポイント引き下げ、銀行間金利プラス0.05%とする◇第2次支援(総額約1,300億ユーロ)に基づくユーロ圏各国及びEUの「欧州金融安定基金(EFSF)」による融資の返済期限を15年延長。利払いも10年延長する◇欧州中央銀行(ECB)がギリシャ国債の取引によって得た利益を放棄し、ギリシャ政府に還元する——ことでも合意した。

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このほか、ギリシャ政府が債務圧縮に向けて発行済みの国債を安値で買い戻す方針も決めたが、具体的な方法は未定で、今後の課題となる。

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ユーロ圏財務相会合の議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相によると、今回の合意を受けて、344億ユーロに上る次回融資が12月13日に実施されるほか、93億ユーロの追加融資が来年1-3月期に3回に分けて実施される。

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