2012/12/27

総合 –EUウオッチャー

欧州委が脱税防止のための行動計画、租税回避地の識別基準統一など提案

この記事の要約

欧州委員会はこのほど、EU 全体で年間1兆ユーロに上るとされる脱税や租税回避の防止に向けた行動計画を発表した。経済のグローバル化が進むなか、各国が独自に対策を進めるだけでは複雑な会計手法を駆使した課税逃れを防ぐことはでき […]

欧州委員会はこのほど、EU 全体で年間1兆ユーロに上るとされる脱税や租税回避の防止に向けた行動計画を発表した。経済のグローバル化が進むなか、各国が独自に対策を進めるだけでは複雑な会計手法を駆使した課税逃れを防ぐことはできないため、加盟国が連携して多国籍企業などによる巨額の脱税や租税回避を防止するための取り組みを強化する。

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欧州委はまず、加盟国が一致して早急に実行すべき行動として、租税回避地(タックスヘイブン)を利用した脱税や租税回避行為と、法律の抜け穴を利用した課税逃れへの対策に関する2つの勧告を打ち出した。タックスヘイブン対策としては、特定の国・地域が租税回避地かどうかを判断するための統一基準を設け、ブラックリストを共有することを提案している。一方、法の穴を埋めるための措置として、課税逃れの目的で二重課税防止条約などの規定が悪用されることのないよう、不正行為への対応に関する共通ルールを導入して各国当局が効率的に連携できる体制を整える必要があると説明している。

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行動計画にはこのほか◇納税の実態把握を容易にするため、域内で国境を越えて活動する企業を対象にEU共通の納税番号制度を導入する◇脱税防止に関する現行ルールを見直し、域内における資金の流れを追跡しやすくするための共通ガイドラインを設ける◇「事業課税に関する行動規範」の策定に向けた協議を加速させる◇共通税制の枠組みを広げ、富裕層に対する課税強化などについて検討を進める――が盛り込まれている。今後、閣僚理事会と欧州議会で行動計画と2つの勧告について協議する。

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EU内では米国に本社を置く多国籍企業が収益に応じた税金を納めていないとの批判が高まっており、英国、フランス、ドイツなどで行き過ぎた租税回避への対抗策を模索する動きが出ている。英国では下院特別委員会が今月3日、コーヒーチェーン大手スターバックス、インターネット検索大手グーグル、オンライン小売り大手アマゾン・ドットコムなどが不当な手段で巨額の課税を免れているとする意見書を採択。オズボーン財務相も同日、あらゆる対策を講じて年間20億ポンドに上る税金逃れを取り締まるとの方針を打ち出した。スターバックスはこうした動きを受け、特殊な会計手法を用いて英国事業を赤字にみせかけ、過去3年間にわたり法人税を納めていなかったことを認めたうえで、2013-14年に最大2,000万ポンドを納めるとしている。

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