2012/12/27

産業・貿易

EU・露首脳会議が成果なく閉会、通商・エネルギーで溝埋まらず

この記事の要約

EUとロシアの首脳会議が20-21日にブリュッセルで開かれ、懸案の通商問題やエネルギー政策などが議題として取り上げられたが、双方の溝は埋まらず具体的な成果はなかった。会議後の会見では欧州委員会のバローゾ委員長が「EUはす […]

EUとロシアの首脳会議が20-21日にブリュッセルで開かれ、懸案の通商問題やエネルギー政策などが議題として取り上げられたが、双方の溝は埋まらず具体的な成果はなかった。会議後の会見では欧州委員会のバローゾ委員長が「EUはすべての国際的な取り決めを尊重し、法の支配を順守している」と述べ、今年8月に世界貿易機関(WTO)への加盟を果たしたロシアの保護主義的な政策を批判。これに対しプーチン大統領は、EUのエネルギー自由化政策により、国営天然ガス独占企業ガスプロムが欧州内で保有するパイプラインの開放を迫られている点に触れ、EUのエネルギー関連法は「野蛮だ」と応酬するなど、関係改善の兆しはまったく見えていない。

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通商問題に関しては、EUはロシア政府が9月に導入した自動車のリサイクル税を最も問題視している。実質的に輸入車のみが対象となっているため、WTO加盟に伴う輸入関税の引き下げで打撃を受ける国内の自動車産業を保護するのが課税の狙いとみられている。EUはこうした保護主義的な政策はWTO協定に違反するとして提訴も辞さない構えを見せており、日本や米国との共同提訴も検討しているとされる。

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EUにとってロシアは米国と中国に次ぐ3番目の貿易相手国。債務危機による景気低迷が長引くなか、ロシアとの貿易拡大を図る狙いからEUは同国のWTO加盟を後押しした経緯がある。

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一方、エネルギー分野では、欧州委が9月に競争法違反の疑いでガスプロムに対する本格調査を開始した。欧州委はガスプロムが中・東欧市場における独占的地位を乱用して、ガス供給の多様化を阻害したり、原油価格に連動させる形でガス価格をつり上げているとの疑いを強めている。

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これに対し、ロシア政府はガスプロムなど国外で活動する戦略的企業を対象に、他国や国際機関への情報提供や、契約変更または国外での不動産売却などに際し、事前に政府の許可を得るよう義務付ける大統領令を制定した。これはEUに対する明らかな対抗措置で、欧州委にとってはガスプロムに対する調査に必要な情報収集が困難になるとみられている。

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首脳会議ではこのほか、ロシアが求めているビザ(査証)なしでEU諸国に入国できる制度の導入についても話し合われたが、特に進展はなかった。プーチン大統領は「EUがビザなし渡航を認めている国のリストが手元にあるが、ベネズエラ、ホンジュラス、モーリシャス、メキシコなど実に多くの国に同制度が適用されている」と指摘。これらの国に比べてロシアは差別的な扱いを受けていると述べ、EU側の対応を強く批判した。

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