2013/1/21

総合 –EUウオッチャー

EU共通運転免許証の交付開始、安全性向上・偽造防止へ

この記事の要約

道路交通の安全確保と免許証の偽造防止を目的とするEU共通の自動車免許制度が19日に導入され、プラスチック製でデザインが統一された「欧州運転免許証」の交付が開始された。既存の免許証も引き続き有効だが、加盟国は更新時に新タイ […]

道路交通の安全確保と免許証の偽造防止を目的とするEU共通の自動車免許制度が19日に導入され、プラスチック製でデザインが統一された「欧州運転免許証」の交付が開始された。既存の免許証も引き続き有効だが、加盟国は更新時に新タイプへの切り替えを進め、2033年までに移行を完了しなければならない。

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EUではこれまで、国ごとに異なる100種類以上の運転免許証が交付されており、国境を越えた移動でしばしばトラブルの原因になっていた。また、既存の免許証には偽造されやすい書類タイプのものが多く、偽造免許証が組織犯罪に利用される可能性が指摘されている。さらに、免許取消などの処分を受けたドライバーが域内の他の国で免許を取り直すといったケースも増えている。欧州委はこうした問題を解消するため、03年にEU共通の運転免許制度の導入を提案。当初は免許を原則として生涯有効としているドイツやオーストリアなどが難色を示していたが、06年に具体的なルールを盛り込んだ法案が採択され、加盟国はこれに沿って国内法の整備を進めていた。

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欧州運転免許証は偽造されにくいプラスチック素材を用いたクレジットカード状の様式で、デザインや記載事項が統一される。ただし、表側には発行する国のシンボルが印刷され、各国の判断で交通ルールの違反歴やナンバープレートなどのデータが入ったマイクロチップを埋め込むこともできる。

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免許証の有効期間は原則10年だが、各国の判断で最長15年まで延長が可能。ただし、トラックやバスの有効期間は5年で、更新時に健康診断を受けることが義務づけられる。また、免許取得のための学科試験や実技試験に共通基準が導入され、試験官も共通基準に沿って研修を受けたり、資格を取得する必要がある。

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一方、各国で若者によるバイク事故が多発している現状を踏まえ、大型二輪の免許取得年齢が現在の21歳から24歳に引き上げられ、小型・中型の運転経験に関する要件も現在の2年以上から4年以上に厳格化される。モペッドについてはこれまで定義や免許取得年齢などの統一ルールが存在しなかったが、今後は共通基準に沿って学科試験が行われ、各国の判断で実技試験や行動テスト、身体検査を追加することもできる。また、加盟国による免許の相互承認については16歳以上を対象とすることを勧告している。

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このほか重大な事故や違反行為で免許停止や取消などの処分を受けた悪質なドライバーが、域内の他の国で新たに免許を取得するケースを防ぐため、EU共通のデータベースを構築して加盟国が必要な情報を共有できるシステムを整備する。

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