2013/1/28

環境・通信・その他

排出権価格が過去最安値を更新、入札延期が安定化のカギに

この記事の要約

EUの排出量取引制度(EU-ETS)の排出権価格が24日、一時1トン当たり2.81ユーロと過去最安値を記録した。これは同日午前の欧州議会エネルギー・産業委員会で、EU-ETS第3期間(13-20年)に有償配分する排出枠の […]

EUの排出量取引制度(EU-ETS)の排出権価格が24日、一時1トン当たり2.81ユーロと過去最安値を記録した。これは同日午前の欧州議会エネルギー・産業委員会で、EU-ETS第3期間(13-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する案が否決されたことが直接の原因。需要の低迷でドイツは18日に予定された排出枠の競売をキャンセルしており、その影響で21日には排出権価格が過去最低の4.79ユーロまで落ち込んだが、排出枠の需給バランスに改善の兆しが一向に見えてこないことから排出権価格は再び急落し、わずか4日で最安値を更新した。

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EU-ETSではこれまで90%以上の排出枠が対象施設に無償で割り当てられてきたが、第3期間からは段階的にオークションによる有償割当への移行を進め、27年までに全面移行することが決まっている。しかし、景気の低迷で生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じており、EU-ETSがスタートした05年に1トン当たり約30ユーロだった排出権価格は昨年の時点で6ユーロ台まで落ち込んでいた。企業に環境投資を促すには最低でも20ユーロの排出権価格を維持する必要があるとされるが、市場ではEU-ETSが計画通りに運用された場合、排出枠の余剰分が20年時点で14億トン超に達し、少なくとも今後5年以内に排出権価格が1トン当たり15ユーロを超えることはないといった試算がある。

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欧州委はこうした現状を踏まえて昨年11月、第3期間にオークション方式で有償配分する排出枠のうち、最初の3年間は競売にかける排出枠を減らし、16年以降に削減分を含めて入札を実施する「バックローディング」と呼ばれる手法を用いて排出枠の需給を調整する構想を打ち出した。当初の計画では13-15年の3年間におよそ35億トン分の排出枠がオークションで配分されることになっていたが、このうち9億ドン分の入札を保留して16年以降に先送りするという内容。なお、第3期間全体では約85億トン分の排出枠が競売にかけられることになっている。

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排出権価格が3ユーロを割り込んだことで、アナリストからは「欧州炭素市場が未知の領域に入った」(トムソン・ロイター・ポイントカーボンのマーカス・フェルディナンド氏)との声が出ており、一層の価格下落に対する懸念が広がっている。欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は今回の事態を受け、排出権価格の暴落はEUに対する「最後の警告」と強調。「一連の動きはEUが緊急に行動を起こす必要性を示している」と述べ、加盟国と欧州議会に対し、排出権価格を下支えするための排出枠の入札延期計画を速やかに承認するよう求めた。

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