2013/2/18

総合 –EUウオッチャー

金融取引税導入の具体案発表、参加国以外の取引にも課税へ

この記事の要約

欧州委員会は14日、EU11カ国が実施する金融取引税導入の具体案を正式発表し、同制度に参加しない国の取引にも課税する方針を打ち出した。一定の条件下での課税となるが、英国など導入を見送るEU諸国や域外の国々が反発するのは必 […]

欧州委員会は14日、EU11カ国が実施する金融取引税導入の具体案を正式発表し、同制度に参加しない国の取引にも課税する方針を打ち出した。一定の条件下での課税となるが、英国など導入を見送るEU諸国や域外の国々が反発するのは必至で曲折が予想される。

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「トービン税」として知られる金融取引税のEUでの導入は、金融危機の元凶となった投機的な取引の抑制と、経営危機に陥った銀行を公的支援するための財源を銀行業界に前もって負担させるのが目的。加盟国のうち9カ国以上が法案などに賛同すれば、それらの国だけで先行して実施することを認めるEU基本条約の規定に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、エストニアの11カ国が導入することを決め、1月のEU財務相理事会で承認された。

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欧州委が来年1月の導入を目指して発表した具体案では、株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税する。外国為替のスポット取引、住宅ローン、預金、保険、増資、各国中央銀行による国債購入は課税の対象外となる。これにより年間300~350億ユーロ程度の税収が見込めるとしている。

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今回の提案で大きな注目を集めたのが、世界中の取引にも課税するという提案。11カ国以外での金融取引であっても、11カ国に拠点がある取引関係者が含まれている場合や、取引される金融商品が11カ国で発行されたものであれば、課税対象とする。例えば、米国の銀行がニューヨーク市場でフランス国債を取引したり、英国の銀行がロンドンでドイツの企業の株式を購入する場合も課税されることになる。

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これに関して、米財務省の報道官は「米国人投資家に悪影響を及ぼす」として反対する意向を表明。英政府も、国内での株式取引に印紙税を課していることから、「二重課税」になることなどを理由に反対すると見られる。

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欧州委の提案はEU27カ国によって協議されるが、最終決定権を持つのは同制度に参加する11カ国に限られており、英国や金融業が経済の柱であるルクセンブルクなどは拒否権を発動することはできない。それでも、米国など国際社会の猛反発を無視して課税を強行するのは避けたいところで、今後の調整での見直しもあり得そうだ。

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