2013/3/11

産業・貿易

加盟国が銀行報酬規制で基本合意、英の例外措置が今後の焦点に

この記事の要約

EU加盟国は5日の財務相理事会で、域内の銀行が行員に支払う賞与(ボーナス)に上限を設けることで基本合意した。ただ、依然として英国が厳格な規制の導入に反対しているため、4月に予定される欧州議会本会議での採決までに、議長国ア […]

EU加盟国は5日の財務相理事会で、域内の銀行が行員に支払う賞与(ボーナス)に上限を設けることで基本合意した。ただ、依然として英国が厳格な規制の導入に反対しているため、4月に予定される欧州議会本会議での採決までに、議長国アイルランドを中心に最終調整に入る。

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規制案によると、原則としてボーナスの上限は年間給与と同額に制限されるが、株主の承認があれば年間給与の最大2倍まで支給することが可能。また、過度のリスクテイクを助長する短期の業績に連動した高額報酬を抑制するため、年間給与を超えてボーナスを増額する場合、支給額の少なくとも4分の1について、最低5年間支払いを繰り延べることが条件となる。新規制はEU域内に本社や現地法人を置くすべての銀行に適用される。

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財務相理では英国を除くすべての国が規制案を支持した。世界有数の金融センターを抱える英国は、国内に拠点を置く銀行の域外移転や人材流出の懸念などを理由に厳格な規制の導入に強く反対している。オズボーン財務相は「英国は新たな規制が銀行制度を損なうような、予想外の悪い結果をもたらすことを懸念している」と強調。「現在の形の規制案は支持できないが、数週間以内に英国も賛成できる案がまとまると期待している」と述べ、英国に対する例外措置を求めた。

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これに対し、アイルランドのヌーナン財務相は「より幅広い支持を得られよう、規制案の技術的な部分を詰める」と応じた。ドイツのショイブレ財務相も英国が承認できる形に微調整する必要があると発言。イタリアのグリリ経済・財務相も全加盟国による合意を目指すべきだとの考えを示した。ただ、欧州議会から新たな譲歩を引き出すことは困難とみられ、ヌーナン財務相は「加盟国による調整の余地は限られている」と警告している。

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域内の銀行員に対するボーナス支給額は年間給与の平均30%となっており、こうした一般の行員は報酬規制の影響を受けない。新規制の対象となるのは年間給与の何倍ものボーナスを受け取っているトレーダーなどのいわゆる「リスクテイカー」で、ロンドンの金融街シティーに拠点を置く大手銀行では一行当たり300~500人、全体で5,000人程度が影響を受けるとみられている。

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(中間タイトル)スイスも企業幹部の報酬に規制導入へ、国民投票で7割が支持

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一方、スイスでは3日、企業幹部に対する報酬規制の是非を問う国民投票が行われ、68%の賛成多数で規制案が承認された。すべての上場企業を対象に、幹部の報酬について株主総会の議決が義務づけられ、株主は法外な退職金や転職時の高額一時金などを阻止できるようになる。違反した企業の経営陣には罰金か禁錮刑が科される可能性がある。新たな規制の導入により、同国は株主が企業幹部の報酬について最も強い発言力を持つ国の1つとなる。

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欧州委員会は国民投票の結果を歓迎している。バルニエ委員(域内市場・サービス担当)の報道官は4日の定例会見で、「欧州レベルで企業の報酬制度に透明性を持たせる動きが本格化しており、非常に良い傾向だ。EUはスイスと同じ方向に進もうとしている」と発言。年内に企業幹部の報酬に対する株主の権限強化を柱とする新たな規制案を提示する方針を明らかにした。

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