2013/4/29

総合 –EUウオッチャー

イタリア新政権がようやく発足、政治空白に終止符

この記事の要約

イタリアで28日、エンリコ・レッタ首相率いる3党連立の新政権が発足した。これによって2月の総選挙から約2カ月にわたって続いていた政治空白がようやく解消。新政権は債務危機の克服と、財政緊縮策によって疲弊した経済の再建に取り […]

イタリアで28日、エンリコ・レッタ首相率いる3党連立の新政権が発足した。これによって2月の総選挙から約2カ月にわたって続いていた政治空白がようやく解消。新政権は債務危機の克服と、財政緊縮策によって疲弊した経済の再建に取り組むことになる。

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同国で2月下旬に実施された総選挙では、モンティ政権が推進してきた財政緊縮・構造改革に対する世論の反発を背景に、モンティ氏を軸とする中道勢力の政党連合が大敗し、同路線を批判するベルルスコーニ元首相率いる中道右派連合、既成の政治を批判するコメディアンのベッペ・グリッロ氏が立ち上げた「五つ星運動」が躍進。財政緊縮の継続を掲げる中道左派連合は下院で過半数の議席を確保したものの、上院では過半数に達した陣営がなかった。イタリアでは上院が下院とほぼ同等の権限を持ち、新政権の発足には上下両院の承認が必要となることから、第1勢力の中道左派を軸とする連立工作が模索された。

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しかし、中道左派の中核である民主党のベルサーニ書記長が、ベルルスコーニ氏が提案した中道右派との大連立を拒否するなど連立交渉は難航。首相の最有力候補だったベルサーニ書記長が次期大統領の選出をめぐる混迷の責任をとって辞任に追い込まれるに至った。

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政治空白の長期化による債務危機対応の停滞で、欧州の信用不安が再燃する懸念が広がる中、曲折の末に20日に続投が決まったナポリターノ大統領は民主党、中道右派の大連立に期待を寄せ、おじがベルルスコーニ氏の側近だった関係で右派にパイプを持つ民主党のレッタ副書記長を24日に新首相に指名し、組閣を要請。レッタ氏は27日、中道右派およびモンティ氏の中道勢力との連立で合意し、組閣作業を完了。28日に新閣僚の就任宣誓式が行われ、新政権が発足した。

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レッタ新首相は46歳。ダレマ政権時の1998年に32歳の若さで欧州担当相として初入閣し、イタリア史上最年少の閣僚となったことで知られる。同氏は政権運営で、財政緊縮一辺倒から、成長も重視する姿勢を表明。雇用対策に最優先で取り組む方針を示している。モンティ政権の緊縮策の象徴とされ、中道右派が撤廃を要求している不動産税の扱いが大きな焦点となる。

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レッタ新首相は経済再建、債務危機対応の司令塔となる経済財務相に伊中銀副総裁のサッコマーニ副総裁を任命。サッコマーニ経済財務相はEUが強く求める財政再建を進めながら、景気にも目配せをするという難題を背負うことになる。

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副首相兼内相に中道右派勢力の中核である自由国民党のアルファノ幹事長を起用。外相にはボニーノ元上院副議長が就任し、初の女性外相が誕生した。

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スキャンダルまみれのベルルスコーニ氏はモンティ氏とともに入閣しなかったが、中道右派は副首相、内相など5つの閣僚ポストを握っており、同氏は新政権で大きな影響力を持つ。このため、新政権がベルルスコーニ氏に振り回され、財政健全化に向けた取り組みなどが迷走しかねないとの見方も出ている。

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