2013/5/21

産業・貿易

スイスなど5カ国との貯蓄課税協定、欧州委に改正に向けた交渉権限付与

この記事の要約

EU加盟国は14日開いた経済・財務相理事会で、EUがスイスなど域外5カ国と結んでいる貯蓄課税協定の改正に向け、欧州委員会に交渉権限(マンデート)を付与することで合意した。EUは国外の銀行口座を利用した課税逃れを阻止するた […]

EU加盟国は14日開いた経済・財務相理事会で、EUがスイスなど域外5カ国と結んでいる貯蓄課税協定の改正に向け、欧州委員会に交渉権限(マンデート)を付与することで合意した。EUは国外の銀行口座を利用した課税逃れを阻止するため、「域内非居住者に対する貯蓄・利子・源泉課税に関する指令(EU貯蓄課税指令)」の改正を目指しており、改正後も5カ国で引き続きEU加盟国と同等の課税措置が適用されるようにするための措置。これまでは貯蓄課税ルールに絡んで銀行守秘義務を温存するルクセンブルクとオーストリアが、同様の制度を堅持するスイスを擁護する立場から欧州委へのマンデート付与に反対していた。しかし、国際的な圧力が強まるなか、ルクセンブルクが先月、銀行守秘義務を緩和して預金者情報の自動交換システムを導入する姿勢を打ち出し、オーストリアも態度を軟化させた。

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EUは非居住者が貯蓄利子に源泉課税しない国で預金する事実上の課税逃れを防止するため、2003年に貯蓄課税指令を制定し、05年から加盟国に非居住者の預金口座に関する情報を口座名義人の居住国に提供することを義務付けている。EUはスイス、リヒテンシュタイン、モナコ、アンドラ、サンマリノとも同様のルールを盛り込んだ協定を結んでいるが、これら5カ国とルクセンブルク、オーストリアについては非居住者の貯蓄利子に源泉税を課し(現在の税率は35%)、徴収分の75%を口座名義人の居住国に還元することを条件に、情報共有を行わずに銀行の守秘義務を維持することが例外的に認められている。

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しかし、貯蓄課税指令にはこうした例外規定に加え、報告義務の対象が個人の利子収入に限定されているなど「抜け道」も多く、企業経営者などによる脱税疑惑が絶えない。EUは貯蓄課税ルール導入後の貯蓄商品や投資家行動の変化を踏まえ、法人の貯蓄資金や基金などを含めたあらゆるタイプの貯蓄収入を課税対象とする方向で検討を進めている。EU指令が改正された場合、域外国と結んでいる現行協定に新ルールを反映させる必要があるため、欧州委が5カ国との交渉にあたる。

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経済・財務相理はこのほか、脱税と課税回避に関する決定を採択し、外国人預金者の利子収入に関する自動的情報交換について、EUレベルおよび主要8カ国(G8)、主要20カ国・地域(G20)、経済協力開発機構(OECD)で進められている取り組みを全面的に支持することを確認した。ただ、オーストリアは銀行守秘義務の放棄には憲法改正が必要で、議会の強い反発が予想されると指摘。さらに加盟国に預金者情報の提供を義務づける場合、チャンネル諸島や英領カリブ諸島など域外のタックスヘイブン(租税回避地)にも同じルールを適用すべきだなどと主張し、自動的情報交換システムの導入に難色を示している。EUの税制改正には全会一致の承認が必要なため、加盟国は今月22日のEU首脳会議で引き続きこの問題について協議することで合意した。

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