2013/5/27

総合 –EUウオッチャー

租税回避対策強化で合意、口座情報交換制度導入へ

この記事の要約

EUは22日の首脳会議で、脱税や租税回避に対する防止策を強化することで合意した。加盟国間で銀行の口座情報を自動的に交換する制度を導入し、税務当局が国外の銀行口座を利用した課税逃れの実態を把握しやすくして税収増につなげる。 […]

EUは22日の首脳会議で、脱税や租税回避に対する防止策を強化することで合意した。加盟国間で銀行の口座情報を自動的に交換する制度を導入し、税務当局が国外の銀行口座を利用した課税逃れの実態を把握しやすくして税収増につなげる。

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欧州では債務危機を受けた緊縮財政が続くなか、EU加盟国は脱税や租税回避で年間1兆ユーロ規模の税収を失っているとされる。EUは非居住者が貯蓄利子に源泉課税しない国で預金する事実上の課税逃れを防止するため、2003年に貯蓄課税指令を制定し、加盟国に非居住者の預金口座に関する情報を口座名義人の居住国に提供することを義務付けている。しかし、ルクセンブルクとオーストリアは非居住者の貯蓄利子に源泉税を課し、徴収分の75%を口座名義人の居住国に還元することを条件に、銀行の守秘義務を維持することが例外的に認められている。このため両国は自動的な口座情報の共有に難色を示していたが、国際的な圧力が強まるなかで態度を軟化させた。

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EU加盟国は年内に口座情報の自動交換制度を導入するための関連法を制定する一方、スイス、リヒテンシュタイン、モナコなど域外国とも口座情報を共有できるよう、個別に交渉を進めることで合意した。さらに6月に英国で開く主要8カ国(G8)首脳会議で、脱税や租税回避を主要議題として取り上げることでも合意した。ファンロンパイEU大統領は「租税回避は自国だけでは解決できない問題だ」と述べ、国際的な協調が不可欠との考えを強調した。

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一方、首脳会議では国際的に事業展開する大企業の節税対策についても話し合われた。多国籍企業が低税率あるいは無税の国に利益を移転して、本国での課税を免れる手法が国際的に批判の的になっており、米国では議会上院が21日、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)を公聴会に招致し、同社の税務戦略を問いただした。アップルは30年以上前にアイルランドに子会社を設立し、同国ではほぼ非課税で事業を展開する一方、米国部門の利益を同法人に移転することで、本国での法人税の支払いを回避してきた。アップル以外にグーグルやヤフーなど、米IT企業の多くが同様の手法を採用しており、こうした節税策が事実上の「税逃れ」にあたるとして批判が高まっている。

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