2013/6/24

産業・貿易

英仏海峡トンネル通行料は不当な高値、欧州委が英仏政府に是正要求

この記事の要約

欧州委員会は20日、英国とフランスを結ぶ英仏海峡トンネルを通る旅客列車や貨物列車に課される通行料が不当に高く設定されているとの調査結果をまとめ、英国およびフランス政府に対して独立した監督機関の設置などを求める文書を送付し […]

欧州委員会は20日、英国とフランスを結ぶ英仏海峡トンネルを通る旅客列車や貨物列車に課される通行料が不当に高く設定されているとの調査結果をまとめ、英国およびフランス政府に対して独立した監督機関の設置などを求める文書を送付したと発表した。両国から2カ月以内に回答がない場合はEU司法裁判所に提訴する可能性がある。

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欧州委は複数の利害関係者からの苦情を受け、英仏海峡トンネルの通行料や同トンネルを通ってパリ/ブリュッセルとロンドンを結ぶユーロスターの料金体系などについて調査を進めていた。英仏海峡トンネルの通行料は旅客列車が片道4,320ユーロ、貨物列車が3,645ユーロ、さらに乗客1人につき16.6ユーロとなっている。一方、欧州委によると、高い通行料のため英仏海峡トンネルの稼働率は57%にとどまり、英国と大陸を結ぶ旅客列車はユーロスターのみ、貨物輸送も依然としてトラックが主流で、貨物列車の需要は数年前から縮小傾向にある。

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鉄道会社はEU法に基づき、線路やトンネルの磨耗・損傷度に応じて使用料や通行料を設定することになっているが、欧州委は英仏海峡トンネルの通行料が不当に高く設定されているため、これが同トンネルを利用した貨物および旅客輸送への新規参入を妨げ、ユーロスターなど既存サービスの運賃上昇を招いていると指摘。「不当に高いトンネル通行料が欧州の鉄道部門全体の成長を妨げている」と断じ、通行料を「大幅に」引き下げるよう求めている。

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一方、英仏海峡トンネルは英仏政府から指名された委員で構成する「政府間委員会(IGC)」の監視下に置かれているが、トンネルをほぼ独占的に利用しているユーロスターは、フランス国鉄(SNCF)と英政府系鉄道会社LCRが株式の計95%を握っていることなどから、欧州委はIGCの独立性が確保されていないと指摘。両国政府に対し、公正な立場で英仏海峡トンネルの運営を監視する独立した監督機関を設置するよう求めた。

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このほか欧州委の調査を通じ、英仏海峡トンネルを運営するグループ・ユーロトンネルがフランス国鉄(SNCF)など特定の鉄道会社と結んでいる、トンネル利用に関する期間65年の制限的契約や、グループ・ユーロトンネルがトンネル通行料を別事業の運営資金に充てていることなどが明るみに出た。欧州委はこうした商慣行はいずれもEU法に違反するとの見解をまとめ、英仏政府に対して是正措置を求めている。

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欧州委は一方、輸送サービスとインフラ管理を手掛ける域内の鉄道会社に対し、両部門の会計を完全に独立させることを義務づけたEUルールにドイツの国内法が適合していないとして、同国政府に改善を求めたことを明らかにした。欧州委によると、ドイツ鉄道はライバル会社から徴収した線路使用料の収益を輸送事業の運営資金に充てており、こうした商慣行は部門間の会計分離を義務づけたEU法に抵触すると指摘している。

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