2013/7/1

総合 –EUウオッチャー

トルコ加盟交渉再開で合意、実際の交渉は先送り

この記事の要約

EU加盟国は6月24、25日にルクセンブルクで開いた総務相理事会で、凍結状態にあるトルコとの加盟交渉を再開することで合意した。ただし、同国の反政府デモに対するエルドアン政権の強権的な姿勢をドイツなどが批判していることを受 […]

EU加盟国は6月24、25日にルクセンブルクで開いた総務相理事会で、凍結状態にあるトルコとの加盟交渉を再開することで合意した。ただし、同国の反政府デモに対するエルドアン政権の強権的な姿勢をドイツなどが批判していることを受けて、実際の交渉再開は10月以降に先送りする。

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トルコとEUの加盟交渉は2005年に開始されたが、トルコがEU加盟国であるキプロス(ギリシャ系の南キプロス)の国家承認を拒否していることや、イスラム教国であるトルコの加盟にドイツ、フランスが難色を示したため、交渉は停滞。35に上る交渉項目のうち交渉開始にこぎ着けたのは13項目、完了したのは1項目だけという状態にある。新たな項目での交渉開始も2010年6月からストップしている。

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交渉再開に傾いたのは、トルコ加盟反対派の急先鋒だったフランスで昨年発足したオランド政権が、前政権の対トルコ強硬方針から転換したため。EU議長国アイルランドは5月末、凍結されていた交渉を6月26日に再開し、新たに「地域政策」での交渉を開始する方針を打ち出していた。

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これに対して独メルケル首相は、トルコ政府によるデモ隊の強制排除を激しく非難し、ドイツは20日に開かれたEU加盟国の大使会合で、交渉再開に拒否権を発動する意向を表明。今回の外相理事会での再開決定が見送られるのは必至と見られていた。

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ドイツの動きにはオランダ、オーストリアが同調した。しかし、トルコ政府が激しく抗議したほか、他の加盟国も問題視したことから、独ヴェスターヴェレ外相は理事会の初日、新項目での開始はとりあえず認めるものの、「最近のトルコでの出来事に目をつむるわけにはいかない」として、実際の交渉は先送りするという妥協案を提示。これを他の加盟国が受け入れた。

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EUはトルコの民主化、人権問題などへの取り組みを注視しながら、交渉再開の可否を今秋に改めて協議する。欧州委員会が10月9日に発表する加盟候補国の改革の進展状況に関する報告書が大きな判断材料となる。

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議長国アイルランドのギルモア外相は、「加盟交渉のプロセスが、トルコの改革にEUが影響力を行使するための最適の手段だ」として、交渉再開の合意にこぎ着けた意義を強調。トルコも外務省が「不十分だが、正しい方向に動き出した」とする声明を発表し、妥協案を歓迎している。

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