2013/7/15

環境・通信・その他

欧州議会環境委、バイオ燃料規制案を承認

この記事の要約

欧州議会環境委員会は11日、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案を賛成多数で承認した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜種や大豆などの食用作物を原料とす […]

欧州議会環境委員会は11日、再生可能エネルギーの利用促進に向けて持続可能なバイオ燃料の生産を可能にするため規制案を賛成多数で承認した。輸送部門における再生可能エネルギーの利用比率のうち、菜種や大豆などの食用作物を原料とする従来型バイオ燃料の比率を最大5.5%に制限することや、バイオ燃料の温室効果ガス削減効果を評価する際、間接的土地利用変化(ILUC:燃料用作物生産のための農地移転)の影響を考慮しなければならないことなどが規制案の柱。食料生産を阻害することなく温室効果ガスを削減するため、食用作物に代わって藻類や農産廃棄物などを原料とする「第2世代」バイオ燃料の生産を促す狙いだが、新規制が導入された場合、一部の従来型バイオ燃料は実質的に生産が不可能になるため業界側の反発は必至で、今後の審議は曲折が予想される。

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EUが2009年に制定した「再生可能エネルギー指令」は、2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする数値目標を掲げ、加盟国に目標達成を義務づけている。さらに、同指令は目標達成のために使用することができるバイオ燃料の持続可能性基準を定めており、原料採取から製造、流通段階も含めたバイオ燃料の温室効果ガス削減率を最低35%とし、17年以降は最低削減率を50%に引き上げることなどを明記している。

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一方、バイオ燃料の持続可能性をめぐる議論では、燃料用作物を生産するためもともとその土地で生産されていた作物を別の土地で生産しなければならず、森林や湿地などの破壊が進んで必ずしも温室効果ガスの削減につながらないとの指摘がある。

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欧州委はこうした現状を踏まえ、昨年10月に第2世代バイオ燃料への投資促進を目的とした規制案を発表。◇輸送部門で使用される再生可能エネルギーのうち、食用作物を原料とするバイオ燃料の比率を最大5%に制限する◇バイオ燃料の供給業者と加盟国に対し、ILUCの影響を踏まえたバイオ燃料の温室効果ガス排出実績に関する報告書の作成を義務づける――などを提案していた。

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欧州委の原案に対し、環境委では食用作物を原料とする従来型バイオ燃料の比率を最大5.5%に緩和する修正が加えられた。一方、バイオ燃料の原料について、20年までに藻類や農産廃棄物などの利用比率を2%以上とする新たな目標を設定している。このほか、バイオ燃料の温室効果ガス削減効果の評価に際してILUCの影響を加味する案は維持された。

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バイオ燃料の生産者団体などは規制案に強く反発している。欧州植物油メーカーの団体Fediolは環境委の採決について「従来型バイオ燃料のシェアを5.5%以下に制限された場合、これまでの投資が無駄になる。EUのバイオ燃料産業にとって大きな痛手だ」と批判。欧州バイオディーゼル委員会(EBB)は、ILUCの影響については現時点で算出方法が確立されていないと指摘。「科学的に実証されていない不確かな仮説に基づく規制は回避しなければならない」と強調している。

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