2013/8/26

産業・貿易

露プーチン大統領、ウクライナのEU接近を牽制

この記事の要約

EU加盟や欧州との経済統合を目指すウクライナと、それを阻止したいロシアの間で通商摩擦が生じている。ロシアは今月中旬、ウクライナから輸入されるほぼすべての品目を対象に、事実上の輸入禁止措置を実施。EUからの非難や国内産業へ […]

EU加盟や欧州との経済統合を目指すウクライナと、それを阻止したいロシアの間で通商摩擦が生じている。ロシアは今月中旬、ウクライナから輸入されるほぼすべての品目を対象に、事実上の輸入禁止措置を実施。EUからの非難や国内産業への影響を考慮して、21日までに同措置を解除したが、プーチン大統領は翌日、ウクライナが引き続きEUとの自由貿易協定(FTA)締結などを目指す場合、ロシアは「防御策」を講じる必要があると発言。禁輸や関税引き上げなどの対抗措置を検討する考えを示した。ウクライナのアザロフ首相が週明けにもモスクワを訪問してプーチン大統領と協議を行うもようだが、妥協点を見出すことは困難とみられ、今後は両国間の紛争が本格化する可能性が高まっている。

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ウクライナはEU加盟を最優先課題と位置付けて政治・経済面での関係強化を図っており、今秋にもEU加盟の第一歩となる安定化・連合協定への署名や、FTA締結を実現するための準備を進めている。これに対し、ロシアは低価格での天然ガス供給を条件に、ウクライナに対してロシア主導の関税同盟への加盟を迫っている。

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プーチン大統領は7月下旬にウクライナを訪問した際、ヤヌコビッチ大統領にロシア、カザフスタン、ベラルーシで構成する関税同盟への加盟を強く求めたが、拒否された。ロシア側はこれを受け、7月末にウクライナの大手菓子メーカー、ロシェンのチョコレートなどについて、品質上の問題を理由にロシアへの輸入を禁止。その後、幅広いウクライナ製品を対象に関税手続きを厳格化し、今月13日からはほぼすべての品目について実質的な禁輸に踏み切った。

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これに対し、欧州委員会は20日、「ウクライナおよび同国とEUの協定に対するロシアの経済的脅威を容認することはできない」との声明を発表。西欧への接近を図るウクライナに対して政治的圧力を強めるロシア政府の対応を強く非難した。

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こうしたなか、ウクライナ政府は20日、ロシアが事実上の全面禁輸を解除し、通常の関税手続きに戻すことで合意したと発表。ロシア側は確認を避けたものの、21日には国境地帯で足止めされていた貨物列車やトラックの通行が再開された。

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しかし、プーチン大統領は22日、ロシア南部に位置する黒海沿いのロストフ・ナ・ドヌで演説し、ウクライナがEUとFTAを締結して関税が撤廃された場合、EU製品がウクライナ経由でロシア市場に流入してくることは避けられないと警告。「専門家は実際にそうした脅威が存在すると考えている。隣国がEUとの自由貿易を選ぶのであれば、関税同盟の構成国は防御策を講じる必要がある」と述べた。

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