2013/9/16

産業・貿易

11カ国の金融取引税導入が混迷へ、EU法務顧問団が条約違反と判断

この記事の要約

EU28カ国のうちドイツなど11カ国が導入する予定の金融取引税について、EUの法務顧問団がEU条約に違反するとの見解をまとめたことが10日、明らかになった。同見解に法的拘束力はないが、原案のまま実施するのは難しい状況で、 […]

EU28カ国のうちドイツなど11カ国が導入する予定の金融取引税について、EUの法務顧問団がEU条約に違反するとの見解をまとめたことが10日、明らかになった。同見解に法的拘束力はないが、原案のまま実施するのは難しい状況で、金融取引税導入をめぐる情勢は混迷しそうだ。

\

「トービン税」として知られる金融取引税のEUでの導入は、金融危機の元凶となった投機的な取引の抑制と、経営危機に陥った銀行を公的支援するための財源を銀行業界に前もって負担させるのが目的。加盟国のうち9カ国以上が法案などに賛同すれば、それらの国だけで先行して実施することを認めるEU基本条約の規定に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、エストニアの11カ国が導入することを決め、1月のEU財務相理事会で承認された。

\

欧州委員会がまとめた具体案では、株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税することになっている。11カ国以外での金融取引であっても、11カ国に拠点がある取引関係者が含まれている場合や、取引される金融商品が11カ国で発行されたものであれば、課税対象とする。

\

金融取引税をめぐっては、導入を見送る英国が強く反発し、4月に欧州司法裁判所に提訴していた。

\

ロイター通信など主要メディアが10日に一斉に報じたところによると、EU財務相理事会の法務顧問団は6日にまとめた意見書で、11カ国以外で行われる取引にも課税する点について、「各国の権限を逸脱するもので、国際的な慣習に反する」と指摘。また、金融取引税を導入しない国が不利となるもので、EU基本条約に抵触するとの判断を示した。

\

欧州委のシェメタ委員(税制担当)は声明で、「金融取引税は法的に正当で、EU基本条約に完全に合致している」として、違法性を否定しながらも、欧州委の法務サービス局が同見解を詳細に検証する意向を表明。ドイツ財務省は、金融取引税の早期導入を支持しながらも、「法的問題は解決しなければならない」としており、金融取引税導入を推進する関係国や欧州委は課税システムの見直しに動く可能性が出てきた。

\