2013/10/14

産業・貿易

銀行破綻処理の一元化に暗雲、法務顧問団が「条約違反」を指摘

この記事の要約

EUが「銀行同盟」創設構想の柱のひとつとして検討している域内銀行の破綻処理を一元化する計画に暗雲が漂ってきた。EUの法務顧問団が7日、破綻処理を統括する「破綻処理委員会」が大きな権限を持つ点について、EU基本条約に抵触す […]

EUが「銀行同盟」創設構想の柱のひとつとして検討している域内銀行の破綻処理を一元化する計画に暗雲が漂ってきた。EUの法務顧問団が7日、破綻処理を統括する「破綻処理委員会」が大きな権限を持つ点について、EU基本条約に抵触するとする意見書を加盟国に提出したためだ。一元化制度を提案した欧州委員会は年内に加盟国の合意を取り付け、2015年から新制度を導入することを目指しているが、骨格部分の違法性が指摘されたことで大幅な修正を迫られ、制度導入がずれ込む可能性が出てきた。

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破綻処理を統括機関に一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度の創設は、銀行監督の欧州中央銀行(ECB)への一元化に続く「銀行同盟」創設構想の第2段階となるもの。欧州委が7月に発表した案では、欧州中央銀行(ECB)、欧州委の代表と対象国の当局者で構成される破綻処理を統括する「破綻処理委員会」を設立し、破綻処理を進めるという内容だ。

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具体的には、ECBが監督対象となる域内銀行の中で問題が浮上した場合に警告を行い、これを受けて破綻処理委員会が対象銀行の経営状況を精査し、救済するか、閉鎖するかを判断し、処理計画を欧州委に勧告する。最終的には欧州委が判断し、統一基金の活用を含めた処理計画を決定。これを対象国が破綻処理委員会の監視下で実施することになる。

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破綻処理委員会の決定は全会一致ではなく多数決となるため、問題の銀行がある国の代表による拒否権発動は封じられる。

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破綻処理の統一基金は、銀行同盟に参加するユーロ圏18カ国および自主的に参加する非ユーロ圏の銀行が、預金保険でカバーされている預金の1%に相当する額を拠出して創設される。運用は破綻処理委員会が受け持つ。同委員会は金融市場で銀行の資産を担保に資金を調達することができる。

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同制度について、EU財務相理事会の法務顧問団は意見書で、破綻処理委員会が対象銀行の清算の可否など重要な問題について決定権を持つことに難色を表明。細目を再検討した上で、権限を縮小する必要があるとの見解を示した。

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同制度をめぐっては、欧州委が最終決定権を持つ点についてドイツが問題視している。意見書では、これについては基本条約に抵触しないとの判断を示した。しかし、同制度運用の実行部隊となる破綻処理委員会のあり方に疑義が生じたことで、欧州委は制度設計を根本から見直すことを求められる。

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欧州委の報道官は8日、一元化制度そのものについては法的問題はないとした上で、法務顧問団の意見に沿って提案を修正する意向を示した。

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