2013/10/21

環境・通信・その他

欧州委が航空排出規制の見直し案発表、領空内のみ排出量取引の対象に

この記事の要約

欧州委員会は16日、域内の空港を発着する航空会社を対象とする温室効果ガス排出規制を見直し、2014-20年まで欧州空域内の飛行分に限定してEU排出量取引制度(EU-ETS)を適用する方針を発表した。今月初めに開かれた国際 […]

欧州委員会は16日、域内の空港を発着する航空会社を対象とする温室効果ガス排出規制を見直し、2014-20年まで欧州空域内の飛行分に限定してEU排出量取引制度(EU-ETS)を適用する方針を発表した。今月初めに開かれた国際民間航空機関(ICAO)の総会で、20年までに世界的な規制の枠組みを構築するとの合意が成立したのを受けた措置。欧州議会とEU閣僚理事会の承認を得て新規制を導入する。

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欧州委の提案によると、欧州経済領域(EEA)を結ぶ路線は従来通り、全行程が排出枠取引の対象となるが、域外の都市と域内を結ぶ路線に関しては、EEAの領空を飛行する分のみに規制が適用される。たとえば東京とEU内の都市を結ぶ路線の場合、アジアやロシア上空などの飛行で排出された温室効果ガスは排出量取引の対象から除外される。このほか、域内を発着する発展途上国の航空会社に関しては、航空部門全体に占める温室効果ガス排出量の割合が1%を超えない限り、全行程で規制が免除される。

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世界全体の二酸化炭素(CO2)排出量に占める航空部門の割合は現時点で2%程度だが、世界的な航空輸送の需要増を背景に、欧州委によると同セクターからの排出量は1990年比で約2倍に拡大した。EUは航空機から排出される温室効果ガスを抑制するため、08年に航空部門をEU-ETSに組み込む方針を決定。域内の空港を発着するすべての航空各社を対象に、過去の実績に基づいてCO2の排出枠を割り当て、実際の排出量が枠を超えた場合は超過分の排出権を市場で購入するか、制裁金の支払いを求めるという内容で、11年1月からEU域内の路線を結ぶ航空機に新規制を適用し、12年1月からは域内の空港を発着して域外と結ぶ国際線の航空機に対象を拡大した。

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しかし、国際間の合意がないまま域外の航空会社に域内ルールを適用するEUのアプローチに対し、米国、中国、インド、ロシアなどが国際法に抵触するとして強く反発。このため欧州委は昨年11月、域内と域外を結ぶ国際線の航空機への規制の適用を1年間、凍結すると発表。この間にICAOの主導で航空機の排出規制に関する国際的な合意をまとめるよう強く要求し、合意形成に至らなければEU独自の規制を再開すると警告していた。

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先にカナダのモントリオールで開催されたICAOの総会では、航空機の温室効果ガス排出削減に向け、20年までに国際的な規制の枠組みを導入することで各国が合意。ICAO理事会で「市場メカニズムに基づく」規制の枠組みについて検討を進め、16年の次回総会で具体的な内容を決定する方針を確認した。こうした動きを受け、欧州委は航空部門に対する規制の見直しを行う意向を示していた。

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欧州委のヘデゴー委員(気候変動担当)は記者会見で「EU域内の飛行を規制することはEUが有する主権的権利だ」と述べ、世界的な規制の枠組みが構築されるまでの間、EEAの領空内では域外の航空会社にもEUの規制を適用することができるとの考えを改めて示した。しかし、米国などからは欧州委の提案を非難する声が上がっている。米航空会社の業界団体エアラインズ・フォー・アメリカ(A4A)の広報担当は、国際間の合意がない状態で一方的にEUルールを押しつけるのは「ICAOの合意を無視する行為だ」と発言。「欧州議会と加盟国に対し、規制案の見直しを強く求める」と述べた。また、国際航空運送協会(IATA)も声明で、EUの規制案に対して「懸念と驚き」を表明。タイラー事務総長は「欧州委の提案はようやく醸成された国際間の信頼関係を損ねかねない」と述べた。

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