2013/11/4

産業・貿易

銀行の破綻処理一元化、欧州委が譲歩も

この記事の要約

欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は10月29日、銀行同盟創設の第2段階として銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度を導入する計画について、統括機関の「破綻処理委員会 […]

欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は10月29日、銀行同盟創設の第2段階として銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる制度を導入する計画について、統括機関の「破綻処理委員会」が破綻処理を直接扱う対象となる銀行を大手銀行に限定する案を検討していることを明らかにした。中小銀行の破綻処理に関する権限を失うことに反発するドイツに対する妥協案となる。

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銀行同盟では、第1段階としてユーロ圏の大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度が来年11月に始動することが決まっている。第2段階のSRMでは、ECBの監督対象となる銀行に問題が生じた場合の処理に関して、ECBと欧州委員会の代表、対象国の当局者で構成される「破綻処理委員会」が統括し、対象銀行を救済するか、閉鎖するかを判断する。

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監督一元化の対象となるのは、ユーロ圏の銀行のうち資産総額が300億ユーロを超えるか、本国の国内総生産(GDP)の20%以上を占める大手銀行で、約130行に上る。ただ、引き続き各国当局が監督する約6,000の中小銀行についても、必要に応じてECBが介入する権限を持つ。このため、破綻処理の一元化では中小銀行も対象となる。

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これについてドイツ政府は、国内に「シュパルカッセ」と呼ばれる中小規模の貯蓄銀行が多くあることから、それらの閉鎖の決定権を独当局が失うことを嫌い、現在の案に抵抗している。

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バルニエ委員がロイター通信に明らかにしたところによると、ドイツの反発を考慮し、破綻処理委員会が閉鎖を指示する権限を持つ銀行をECBの直接監督下にある大手銀行だけに限定する方向で調整を進めているという。

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一方、ドイツは破綻処理委が救済または閉鎖の判断し、処理計画を欧州委に勧告するが、最終的には欧州委が決定権を持つ点についても、欧州委が強大な権限を持ちすぎるとして反発している。これについてバルニエ委員は、同権限を持つ新機関を設立するためにはEU基本条約の改定が必要で、手続きに時間がかかるとして、欧州委に最終決定権を持たせることでは譲らない姿勢を示した。

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