2013/11/4

環境・通信・その他

自動車排ガス規制強化策、EU議長国が段階実施を提案へ

この記事の要約

2020年を達成期限とする新たな自動車排ガス規制案をめぐり、EU議長国リトアニアが規制強化に反発するドイツの意向に沿った内容の妥協案をまとめたもようだ。ロイター通信が10月29日、EU筋の話として報じたもので、2年間の移 […]

2020年を達成期限とする新たな自動車排ガス規制案をめぐり、EU議長国リトアニアが規制強化に反発するドイツの意向に沿った内容の妥協案をまとめたもようだ。ロイター通信が10月29日、EU筋の話として報じたもので、2年間の移行期間を置いて22年までに段階的に新規制を導入するという内容。非公式の環境相会議を経て11月初めにも欧州議会との間で協議が行われる見通しだが、自国メーカーがすでに高い水準の排出削減を達成しているイタリアやフランスなどが妥協案に反対する可能性もあり、交渉は難航が予想される。

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EUでは現在、2020年までに域内全体で温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも20%削減するという公約の実現に向け、15年までに乗用車のCO2排出量を走行1キロメートル当たり平均135グラム以下に抑えることを各メーカーに義務付けている。欧州委は昨年7月、低炭素社会への転換を促しながら環境分野の技術革新で新たな雇用を創出する取り組みの一環として、20年までに新車のCO2排出量を走行1キロメートル当たり平均95グラム以下に抑えることを各メーカーに義務付ける新たな規制案を打ち出した。EU加盟国と欧州議会は今年6月、新たな規制案の導入で基本合意したが、規制強化に難色を示すドイツの圧力で同月末の首脳会議では協議を先送り。加盟国は今月14日の環境相理で、規制案の見直しを行うことで合意した。

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ドイツが規制強化に反対しているのは、自国メーカーのダイムラーやBMWは大型車が主体で燃費性能に劣っており、排出基準の順守が難しいためだ。ドイツは新規制が導入されると国内自動車業界が大きな負担を強いられ、人員削減を余儀なくされるなどと主張し、より緩やかな規制にとどめる方向での見直しを要求。走行1キロメートル当たりのCO2排出量を平均95グラム以下に抑える目標の達成期限を4年先送りし、24年とすることを提案していた。

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ロイターによると、リトアニアがまとめた妥協案の柱は◇平均95グラム以下に抑える新規制を22年までに段階導入する◇スーパークレジットの適用を拡大する――の2点。スーパークレジットはメーカーに対する奨励策として14年から導入予定の低公害車に対する優遇措置で、走行1キロメートル当たりCO2排出量が50グラム未満の電気自動車やハイブリッド車を1台販売するごとに3.5台を販売したとみなし、総排出量を換算後の「みなし台数」で割ることで、他モデルを含めた1台当たりの平均排出量を削減できる仕組み。欧州委は実際の販売台数に対する乗数を段階的に引き下げ、17年末で優遇措置を打ち切ることを提案していたが、加盟国と欧州議会はドイツの圧力で20年以降も同制度を維持することで合意。しかし、ドイツはさらなるスーパークレジットの適用拡大を主張し、換算係数の見直しなどを求めていた。

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あるEU外相はロイターに対し、スーパークレジットの拡大には小型車が主体のフィアットやルノーなどを擁するイタリアやフランスなどが反対する公算が大きいと指摘。スーパークレジットを拡大すると実質的に新規制の導入が4年遅れることになるとの分析などを踏まえ、最終的には22年までに新規制を段階的に導入する方向で調整が図られ、スーパークレジットについてはすでに合意している内容が維持されるとの見方を示した。

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