2013/11/11

総合 –EUウオッチャー

14年のユーロ圏成長率は1.1%、欧州委が秋季予測で下方修正

この記事の要約

欧州委員会は5日発表した秋季経済予測で、ユーロ圏の2014年の域内総生産(GDP)予想伸び率を1.1%とし、前回予測(5月)の1.2%から0.1ポイント下方修正した。ギリシャに端を発した信用不安で揺れた金融市場が落ち着き […]

欧州委員会は5日発表した秋季経済予測で、ユーロ圏の2014年の域内総生産(GDP)予想伸び率を1.1%とし、前回予測(5月)の1.2%から0.1ポイント下方修正した。ギリシャに端を発した信用不安で揺れた金融市場が落ち着きを取り戻したことなどで景気は復調しているが、回復のペースは緩やかで、悪化している雇用を一気に改善するには至らないと予想。失業率は14年まで高水準で推移するとみている。(表参照)

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ユーロ圏は今年4-6月期に前期比0.3%のプラス成長となり、景気後退を脱脱した。欧州委は下期に0.5%の成長を見込んでいるが、通年の予想成長率はマイナス0.4%と、前回から据え置いた。15年の成長率は1.7%に拡大すると予想している。

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EU28カ国ベースの予想成長率は、13年が0%で、前回のマイナス0.1%から上方修正。14年は1.4%、15年は1.9%とした。14年は前回予測と変わらず。

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14年の国別成長率をみると、債務危機でEUなどから金融支援を受けている5カ国のうち、アイルランドは13年に0.3%のプラス成長に復帰し、14年には成長率が1.7%まで拡大する見通し。ギリシャ、スペイン、ポルトガルは、13年はマイナス成長となるものの、14年はそれぞれ0.6%、0.5%、0.8%のプラス成長になると予想している。キプロスだけは13年が8.7%、14年は3.9%のマイナスと回復が遅れ、15年に1.1%のプラス成長に復帰する見込み。

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主要国では、債務危機に直面するイタリアが13年に1.8%のマイナス成長となるものの、14年にプラス0.7%に回復すると予想。フランスの成長率は13年の0.2%から14年に0.9%まで拡大すると見込んでいる。ドイツの予想成長率は13年が0.5%、14年が1.7%。

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ユーロ圏の失業率は9月時点で12.2%と、過去最悪の水準となっている。欧州委の予測では、13年、14年とも12.2%と高止まりし、15年に11.8%に低下する見通し。新規の雇用を創出するほど景気が力強く回復しないという状況で、欧州委のレーン委員(経済通貨問題担当)は、「財政再建と構造改革によって回復の基盤ができたが、勝利を宣言するのは時期尚早だ」と述べ、持続的な成長と雇用創出に向けた取り組みの強化が急務との認識を示した。

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さらに欧州委は、ユーロ高が進み、13年は対ドルで5.8%、14年は0.9%上昇するとの予想を示しており、ユーロ圏の輸出主導の景気回復に脅威となる恐れがある。

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12年にGDP比3.7%となったユーロ圏の財政赤字は徐々に改善する見通しだが、フランスは15年の赤字が3.7%と、EUの財政規律で上限となっている3%を大きく超過する見込み。同年までに3%以下に削減するという約束を順守できないことになる。16年の財政規律順守を約束しているスペインも、15年の赤字は6.6%と上限を大きく上回る見通しで、目標達成が難しい情勢だ。一方、大幅な改善が見込まれているのはギリシャとイタリア。ギリシャの赤字は13年の13.5%から、14年には許容範囲内の2%まで縮小する見通し。イタリアも14年に2.7%まで改善すると予想されている。

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ユーロ圏の予想インフレ率は、13年、14年が1.5%、15年が1.4%と、12年の2.5%を大きく下回り、欧州中央銀行(ECB)が上限目標値とする2%を割り込む状況が続く見通しだ。

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