2013/11/11

総合 –EUウオッチャー

アイルランドが来月に金融支援脱却、ユーロ圏の債務危機国で初

この記事の要約

欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は7日、債務危機で金融支援を実施しているアイルランドの財政再建に関する最後の査察を終え、同国の財政立て直しが順調に進んでいると評価した。これによってアイルランドは […]

欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は7日、債務危機で金融支援を実施しているアイルランドの財政再建に関する最後の査察を終え、同国の財政立て直しが順調に進んでいると評価した。これによってアイルランドは12月15日に、債務危機で国際支援を受けているユーロ圏4カ国で最初に金融支援から脱却し、金融市場で独自に資金を調達しながら財政再建の総仕上げに取り組むことになる。

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アイルランドの債務危機は、2008年の不動産バブル崩壊で国内銀行が大きな打撃を受けたのがきっかけ。2009年に国有化した大手銀行の経営難が続いているため、10年に新たな巨額の公的資金注入を発表したことで、ギリシャに端を発した信用不安が波及し、国債利回りが急上昇して独自の資金調達が不可能となり、債務危機に陥った。

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これを受けてEUとIMFは10年11月、総額675億ユーロの金融支援実施を決定。アイルランド政府は同支援に頼りながら、EUなどと約束した財政緊縮を導入し、財政再建を進めてきた。

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同じく金融支援を受けたギリシャ、ポルトガルでは、支援の条件となる厳しい財政緊縮策に国民が反発し、デモなどが頻発したが、アイルランドでは大きな混乱なく財政再建が進み、財政赤字は2015年に国内総生産(GDP)比2.9%と、EUの財政規律が定める上限の3%を割り込む見込みだ。指標となる10年物国債の流通利回りは現在3.5%前後で推移しており、ピーク時だった11年の15%から急減。今年3月には、金融支援を受けてから初めて実施した10年物国債の入札で、順調に50億ユーロを調達した。経済も財政緊縮という厳しい環境下にありながら復調し、今年4-6月期のGDPは前期比0.4%増となり、4四半期ぶりにプラス成長に転じた。

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金融支援の期限である12月15日を前に、アイルランドの財政再建の進捗状況を検証するため同国を訪れた欧州委員会、ECB、IMFの合同調査団は、同国がすべての目標を達成したと結論付け、最終審査は問題なく終了。アイルランドのヌーナン財務相は来月15日に金融支援から脱却することを宣言し、「多くの人が達成できないと危ぶんでいたことを達成できた。画期的な日だ」と述べた。

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ただ、アイルランドは銀行がなお多額の不良債権を抱え、貸し渋りが続いているほか、失業率が13.6%と高水準にある。住宅価格もバブル崩壊前の水準の48%にとどまっており、ヌーナン財務相は「まだ多くの困難がある」と警戒を緩めていない。

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こうした不安が残るなか、政府は金融支援終了後に不測の事態が生じて信用不安が再燃し、自力での資金調達が難しくなる場合に備えた保険として、EUとIMFに「予防的クレジット・ライン」と呼ばれる予防的融資枠の設定を要請することを検討している。IMFは市場の信用を保つための安全弁として、同制度を利用させたい考えだ。政府は12月15日までに要請するかどうかを決める予定。

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