2013/12/2

総合 –EUウオッチャー

英首相がEUからの移民流入を規制へ、欧州委は猛反発

この記事の要約

英キャメロン首相はこのほど、中東欧など他のEU加盟国からの移民流入を制限する方針を打ち出した。移民排斥を唱える右派政党の躍進を意識したものだが、EUの労働市場開放に関するルールの見直しにまで踏み込んでおり、欧州委員会が猛 […]

英キャメロン首相はこのほど、中東欧など他のEU加盟国からの移民流入を制限する方針を打ち出した。移民排斥を唱える右派政党の躍進を意識したものだが、EUの労働市場開放に関するルールの見直しにまで踏み込んでおり、欧州委員会が猛反発するなど波紋を広げている。

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EUでは原則的に、加盟国が相互に労働市場を開放し、各国の労働者が国境を越えて自由に移動できるようになっている。各国は他の加盟国出身者を福利手当てなどで自国民と対応に扱うことを求められる。

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しかし、キャメロン首相は11月27日付の英フィナンシャル・タイムズに掲載された寄稿で、中東欧の加盟国から英国の手厚い福利を目的に大量の労働者が流入しているとして、現在は同国に入ってから1カ月後に受給資格が認められる失業手当手

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の給付を3カ月後に延長するほか、給付期間を最長6カ月に制限する意向を表明。路上生活、物乞いを行った移民を国外退去とし、1年間は再入国を禁止する方針も打ち出した。さらに、EUに対して域内での人の移動に関するルールの抜本的見直しを迫り、1人当たりの国内総生産(GDP)が一定水準に達しない国の労働者については他の加盟国での就労を制限できるようにすることも明らかにした。

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英国では反EU、移民排斥を掲げる英国独立党(UKIP)が国民の支持を集めており、5月に行われた統一地方選挙で3位に躍進。与党・保守党内では、来年の欧州議会選挙、15年に実施される総選挙をにらみ、首相に移民規制強化に踏み切るよう求める声が強まっていた。

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キャメロン首相がこの時期に同方針を打ち出し背景には、英国が2007年にEU加盟国となったルーマニア、ブルガリアの労働者に適用している就労制限が今年末で期限を迎え、来年1月から労働市場を完全開放しなければならないという事情がある。首相は寄稿で、2004年のEU東方拡大でポーランドなど8カ国がEU入りした際に、当時の労働党政権が中東欧への労働市場開放に応じたことを「とんでもない失策だった」と批判。人の自由な移動がEUの大原則となっていることに理解を示しながらも、「無条件に認められるべきではない」として、一定の制限措置の必要性を強調した。

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これに対して欧州委員会のラースロー・アンドル委員(雇用・社会問題担当)は27日、移民問題への英国の懸念を「過剰反応」として、移民規制を「一方的なレトリックに基づく一方的な措置」と非難。「それが実施されれば、英国がEUで陰険な国とみなされる」と述べ、自重を促した。また、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアの外相は29日に発表した共同声明で、「人の自由な移動はEUの要石だ」として、英の動きを批判した。

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