2013/12/2

総合 –EUウオッチャー

ウクライナが連合協定の調印見送り、経済低迷で対露関係改善を優先

この記事の要約

EUと旧ソ連6カ国は11月28、29の両日、リトアニアの首都ビリニュスで首脳会議を開き、モルドバとグルジアがEUとの自由貿易協定(FTA)を含む「連合協定」に仮調印した。一方、ウクライナはEUへの接近を牽制するロシアから […]

EUと旧ソ連6カ国は11月28、29の両日、リトアニアの首都ビリニュスで首脳会議を開き、モルドバとグルジアがEUとの自由貿易協定(FTA)を含む「連合協定」に仮調印した。一方、ウクライナはEUへの接近を牽制するロシアからの強い圧力を背景に、連合協定への正式調印を見送った。ウクライナは欧州との経済統合を最優先課題に掲げてEUとの連携強化を目指しており、協定への調印はロシアの影響を強く受けてきた同国にとって歴史上の大きな転換点と位置付けられていた。ウクライナは低迷する経済の立て直しを図るため、当面はロシアとの関係改善に軸足を移すものとみられる。

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ウクライナは約5年に及ぶ交渉を経て、昨年3月にEUとの連合協定に仮調印した。EU側はヤヌコビッチ大統領の政敵で、職権乱用罪で収監されているティモシェンコ前首相の釈放を連合協定締結の条件としているため、ウクライナ政府は病気療養の名目で前首相の一時釈放を認める法案を打ち出し、今回の首脳会議での正式調印を目指していた。これに対してロシア側は、天然ガスの供給停止をちらつかせるなどしてウクライナに調印を断念するよう牽制。ヤヌコビッチ大統領は首脳会議を1週間後に控えた先月21日、協定締結に向けた準備作業を中断すると発表した。大統領は国民に向け、ロシア側の締めつけで輸出が落ち込み、経済状態が悪化するなかで「やむをえない判断だった」と釈明したが、首都キエフを中心に政府の決定に抗議する大規模なデモや集会が相次ぎ、緊迫した状態が続いている。

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EU側は首脳会議の場でウクライナに連合協定への調印を促したが、ヤヌコビッチ大統領はロシアの圧力を背景とする「複雑な経済状況」について説明。ロシアからの天然ガスの輸入に膨大なコストがかかっているなどと訴えた。EU外交筋によると、ウクライナ側はEU、ロシア、ウクライナによる3者協議を提案しており、EUに対して国際通貨基金(IMF)の融資再開に向けた協力を要請した。一方、EUはロシアを含めた3者協議を拒否し、ヤヌコビッチ大統領は調印を見送った連合協定の締結を確約する必要があると応じた。

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EU議長国リトアニアのグリバウスカイテ大統領は声明で、「ヤヌコビッチ大統領からは連合協定ではなく、ウクライナが直面する経済問題について説明があった。大統領はEUとロシアによる問題解決を望んでいる」と指摘。オランド仏大統領は「ウクライナが望むのであれば、交渉の扉は常に開いている」と述べた。ただ、EU内部ではEUとロシアの双方からできるだけ多くの援助を引きだそうとするヤヌコビッチ大統領の外交手法に対する批判も出ており、今後1年以内に連合協定が締結される可能性は低いとの見方が大勢だ。

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