2013/12/2

環境・通信・その他

EU・米間のデータ共有、個人情報保護強化に向け提言

この記事の要約

欧州委員会は11月27日、米当局による広範な情報収集活動が明るみに出たことをきっかけに急速に悪化した個人情報保護に関するEU・米間の信頼関係を修復するための具体策をまとめた。より一段の個人情報保護強化を図るため、欧州委が […]

欧州委員会は11月27日、米当局による広範な情報収集活動が明るみに出たことをきっかけに急速に悪化した個人情報保護に関するEU・米間の信頼関係を修復するための具体策をまとめた。より一段の個人情報保護強化を図るため、欧州委が提案しているデータ保護法改正案の速やかな採択や、商用目的でEUから米国に提供される個人情報の取り扱いに関する基本原則を定めた「セーフハーバー協定」の見直しなどを提言している。

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米国家安全保障局(NSA)がテロ対策などの目的でEUおよび加盟国の政府機関や要人、さらに一般市民の通話記録やインターネット上の情報を広く収集していた事実が発覚したのを機に、EU内では米政府に対する批判が高まっている。EUと米国は7月に双方の専門家による作業部会を設置。同月にスタートした自由貿易協定(FTA)締結交渉と並行して、当局による情報収集のあり方や個人情報の取り扱いなどについて協議を行っている。一方、欧州委は米国が2001年の同時多発テロを受けて策定したテロ資金の根絶を目的する「テロ資金追跡プログラム(TFTP)」に基づき、EUが米国と結んだ金融取引データの提供に関する協定や、EU域内から米国に向かう航空機の旅客情報(PNR)の提供に関する協定について見直しを進めている。

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欧州委はEU・米間で必要なデータの移転や共有を継続的に維持するには、双方で高度なデータ保護水準を確保することが前提になると指摘。個人情報保護強化に向けた具体策として◇欧州委が2012年1月に打ち出した1995年のデータ保護指令に代わる「データ保護規則(案)」を14年春までに採択する◇14年夏までにセーフハーバー協定の見直しを進め、欧州委が現状を踏まえて適用条件の厳格化などを検討する◇警察・刑事司法協力に基づいて処理される個人情報の保護に関する枠組み協定の早期締結を目指す――などを提言している。

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欧州委のレディング副委員長(司法担当)は「EU市民や企業、要人に対する大規模なスパイ活動を容認することはできない。EUと米国の市民は個人情報が十分に保護されていることを確認し、企業は既存の協定が順守されていることを知る必要がある」と強調。マルムストロム委員(内務担当)は「米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン容疑者の暴露によって米政府に対するEU市民の信頼は大きく揺らぎ、情報機関による個人情報へのアクセスが明るみに出たことで深刻な不信感は現在も払拭されていない。米国が信頼を回復し、EU市民が確実に個人情報が保護されていると確信できるようにするためにEUと米国が取り組むべき課題をまとめた」と説明している。

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