2014/1/6

産業・貿易

監査法人の規制強化案で基本合意、契約期間は最長10年に

この記事の要約

欧州議会とEU加盟国は12月17日、監査法人に対する規制強化案の内容で基本合意した。監査法人と顧客企業の馴れ合いを防ぐため、域内の上場企業や金融機関に監査法人の定期的な変更を義務付ける「交代制」の導入や、監査先の企業に対 […]

欧州議会とEU加盟国は12月17日、監査法人に対する規制強化案の内容で基本合意した。監査法人と顧客企業の馴れ合いを防ぐため、域内の上場企業や金融機関に監査法人の定期的な変更を義務付ける「交代制」の導入や、監査先の企業に対する非監査業務の提供禁止などを柱とする内容。EU全体で監査法人に対する監視を強化するとともに、「ビッグ4」と呼ばれる大手監査法人による寡占状態を改善し、監査業務の透明性を高めて金融危機の再発防止につなげるのが狙いだが、欧州委員会が2年前に打ち出した規制案に比べると全体として緩やかな内容になっている。欧州議会と加盟国の正式な承認を経て新ルールが導入される。

\

監査法人に対する規制をめぐっては、2000年代初めに米国でエンロンやワールドコムなど大手企業の不正会計事件が発覚したのを受けて見直しが議論され、監査責任者の交代制導入や、担当する企業への非監査業務の制限といった改革が実施された。しかし、先の金融危機では監査法人が適正意見を出していた多くの金融機関が深刻な状況に陥ったことから、監査の信頼性が問われる事態となり、欧州委が抜本的な改革に向けた具体策の検討に着手。11年11月に上場企業や金融機関など、国境を越えて活動する企業に対する監査業務を対象とする規制強化案を打ち出した。

\

欧州議会と加盟国が合意した妥協案によると、上場企業や金融機関は10年ごとに監査法人を変更しなければならないが、入札を経て契約期間を最長10年延長することができる。また、複数の監査法人による共同監査を受けている場合は最長14年の延長が可能。欧州委の原案では監査法人との契約期間は最長6年に制限され、共同監査の場合でも契約延長は最大9年までとなっていた。

\

一方、利益相反を防ぐため、監査法人は顧客企業に対し、税務コンサルティングなど財務・投資戦略に影響を与えるような監査業務以外のサービスを提供することが禁止される。それ以外の非監査業務に関しては、報酬に上限(監査報酬の最大70%)が設けられる。

\

このほか監査サービスの質を高めて投資家により関連性の高い情報を提供するため、監査法人はより詳細で役立つ監査報告書の提出が求められる。さらにアカウンタビリティ向上の観点から、各企業で内部監査を担当する監査委員会の権限を強化し、監査法人の業務内容を注意深く監視することや、従来より容易に株主が監査人の解任を提案できるようにすることも規制案に盛り込まれている。

\