2014/2/3

環境・通信・その他

再生可能エネルギーの補助金規定、欧州裁法務官が違法の見解

この記事の要約

欧州司法裁判所は1月28日、EUの「再生可能エネルギー促進指令」に盛り込まれた補助金に関する規定がEU条約に抵触するとの法務官見解を明らかにした。最終的に司法裁が法務官の見解に沿った判断を示した場合、EUは気候変動・エネ […]

欧州司法裁判所は1月28日、EUの「再生可能エネルギー促進指令」に盛り込まれた補助金に関する規定がEU条約に抵触するとの法務官見解を明らかにした。最終的に司法裁が法務官の見解に沿った判断を示した場合、EUは気候変動・エネルギー政策の柱の1つと位置付ける再生可能エネルギー促進策の大幅な見直しを迫られることになる。

問題となっているのは、再生可能エネルギー発電投資支援策の中心となる公的支援に関連して、各国政府は発電施設が国外にある企業への補助金交付を拒否することができるとした規定。スウェーデン政府がEU指令に基づき、バルト海に位置するフィンランド自治領のオーランド諸島で風力発電を行っているオーランド・ヴィントクラフト社への補助金交付を拒否したところ、同社はスウェーデン政府が自国で生産されたエネルギーに不当な優位性を与えているとして訴訟を提起。スウェーデンの裁判所がEU指令とEU条約の整合性について欧州裁に判断を求めていた。

再生エネルギー促進指令は2020年に向けたエネルギー政策の柱となる「気候変動・エネルギー政策パッケージ」の一環として、EUが2009年に採択したもので、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率をEU全体で2020年までに20%に高めるという目標のほか、国別の数値目標を定めている。欧州裁のイブ・ボット法務官は意見書で「発電施設が他のEU諸国にある企業による補助金へのアクセスを禁止または制限する権限を各国政府に認めたEU指令第3条第3項は、域内における人、モノ、サービス、資本の自由な移動を保障したEU条約に抵触する」と指摘している。

再生可能エネルギーの導入支援策をめぐっては、ドイツやスペインなどを中心に、固定価格買取制度や発電投資を後押しするための多額の補助金が電力料金の高騰を招いたとの批判が高まっている。こうしたなか、欧州委員会は国ごとに異なる補助金制度を調和させ、単一市場を創設して国境を越えたエネルギーの相互融通を促すための取り組みを進めようとしている。欧州裁が再生可能エネルギー促進指令に盛り込まれた補助金規定を無効と結論づけた場合、現行の補助金制度は抜本的に見直されることになり、再生可能エネルギーの普及にブレーキがかかる事態も予想される。