2014/2/10

産業・貿易

欧州議会、鉄鋼業界支援の決議案を採択

この記事の要約

欧州議会は4日、欧州鉄鋼業界の活性化に向けた行動計画に関する決議案を採択した。景気の低迷に伴う需要の落ち込みで不振にあえぐ鉄鋼業界の競争力を強化し、雇用の維持・拡大を図るのが狙いで、決議案はEUの温暖化対策によって域内企 […]

欧州議会は4日、欧州鉄鋼業界の活性化に向けた行動計画に関する決議案を採択した。景気の低迷に伴う需要の落ち込みで不振にあえぐ鉄鋼業界の競争力を強化し、雇用の維持・拡大を図るのが狙いで、決議案はEUの温暖化対策によって域内企業が新たな負担を強いられることがないようにする必要があると指摘。欧州委員会とEU加盟国に対して経済的に実行可能な気候変動・エネルギー政策を策定し、エネルギー価格の引き下げなどに取り組むよう求めている。

欧州の鉄鋼産業は長く主要産業の地位を占めてきたが、域内の鉄鋼需要は金融危機以前に比べて約30%縮小し、雇用も2011年までの4年間に約1割削減された。こうしたなか欧州委は昨年6月、鉄鋼業界を「欧州にとって戦略的に重要な産業」と位置づけ、雇用の減少や生産拠点の海外移転を防ぐための優先課題を定めた行動計画を発表。シェールガス開発でエネルギーコストが大幅に低減した米国などとの競争で不利な立場に立たされる域内企業を支援するため、電力価格の引き下げや海外市場へのアクセスの改善などに取り組む方針を打ち出した。欧州委は一方、1月に2030年に向けた気候変動・エネルギー政策の枠組みをまとめ、同年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減するなどの野心的な目標を打ち出している。

欧州議会の決議案は、鉄鋼産業は欧州の製造業を支える土台であり、引き続き戦略的に重要なセクターと指摘。「EUの環境・エネルギー政策によって域内の鉄鋼業界はエネルギー価格の上昇に直面し、困難なビジネス環境に置かれている」として、国際競争力の観点を考慮した「バランスの取れた包括的アプローチ」の必要性を強調。欧州委に対して◇30年までの気候変動・エネルギー政策で掲げる目標を、域内の鉄鋼産業にとって「技術的、経済的に実行可能な」水準にする◇気候変動対策により、域内で最もエネルギー効率の高い製鉄所が新たなコスト負担を強いられることがないようにする◇EU排出量取引制度(EU-ETS)との関連で、規制の緩い第3国に生産拠点を移す「カーボンリーケージ」のリスクが特に高い産業部門に関しては、ベンチマークに基づき100%の無償割当を受けられるようにする――などを求めている。

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)のゴードン・モファット事務局長は「欧州委およびEU加盟国に対する欧州議会の強いメッセージを歓迎する。欧州議会は気候変動政策と産業競争力のバランスを取る必要性を十分に認識している」とコメントしている。