2014/2/10

産業・貿易

GMトウモロコシの商業栽培、独の採決棄権で認可濃厚

この記事の要約

欧州委員会が遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ「TC 1507」の商業栽培を認可するようEU加盟国に勧告している問題で、態度を保留していたドイツは5日、閣僚理事会での採決を棄権する方針を明らかにした。11日に予定される特 […]

欧州委員会が遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ「TC 1507」の商業栽培を認可するようEU加盟国に勧告している問題で、態度を保留していたドイツは5日、閣僚理事会での採決を棄権する方針を明らかにした。11日に予定される特定多数決による採決では認可支持派、反対派のいずれも過半数に達しない見通しで、理論上はEUの規定により、最終決定権を持つ欧州委が同品種の栽培を認可する可能性が高い。ただ、フランスを筆頭に相当数が反対票を投じるとみられることから、最終的には欧州委の政治判断で認可が見送られるとの見方も出ている。

欧州委が域内での栽培認可を提案しているTC 1507は、米ダウ・アグロサイエンスと米デュポン傘下のパイオニア・ハイブレッド・インターナショナルが共同開発した害虫抵抗性・除草剤耐性のトウモロコシで、北米や中南米を中心に「Herculex」のブランド名で広く栽培されている。欧州委は2001年に同品種の認可申請を受理。欧州食品安全機関(EFSA)はこれまで6回にわたり「1507は安全」との見解を表明しているが、安全性への懸念から加盟国による採決では未だに支持派も反対派も特定多数に達しておらず、審査期間が10年以上に及んでいる。欧州司法裁判所の一般裁判所は昨年9月、GM作物の認可手続きが不当に長引いている状態はEU法に違反するとの判断を示し、これを受けて欧州委が11月に同品種の栽培認可を勧告した経緯がある。

ロイター通信によると、ザイベルト独政府報道官は5日、「ドイツ政府はTC1507の栽培認可に関する採決を棄権することで合意した。政府内で意見調整がつかない場合に棄権するのは通常の手続きだ」と述べた。

GM作物をめぐっては、英国やスペインを中心とする推進派とフランスやイタリアなどの反対派の間で依然として溝が深く、議論は平行線をたどっている。TC 1507の栽培認可に関しては、09年の前回採決では賛成6カ国、反対12カ国、棄権9カ国となっていた。欧州委のボルジ委員(保健・消費者政策担当)は加盟国に認可を勧告した際、「棄権は賛成票とみなす」と述べ、過半数の国が反対票を投じない限り、商業栽培が認可されるとの考えを示していた。