2014/2/17

総合 –EUウオッチャー

伊レッタ首相が辞任、改革停滞による党内批判で

この記事の要約

イタリアのレッタ首相は13日、辞意を表明した。母体である中道左派の与党・民主党が同日の幹部会で、現政権の財政再建など構造改革の遅れを批判し、新政権発足を求めることを決議したのを受けたもの。昨年2月の総選挙後の混乱を収拾す […]

イタリアのレッタ首相は13日、辞意を表明した。母体である中道左派の与党・民主党が同日の幹部会で、現政権の財政再建など構造改革の遅れを批判し、新政権発足を求めることを決議したのを受けたもの。昨年2月の総選挙後の混乱を収拾するため発足したレッタ政権だが、大きな成果をあげることなく1年足らずで退陣に追い込まれた。後任の首相には、民主党のレンツィ書記長の就任が確実視されている。

民主党の党首であるレンツィ書記長は幹部会で、レッタ政権の改革の遅れを厳しく批判し、景気後退と債務危機に直面するイタリアが状況を打開するには政権交代が必要として、首相の退陣を要求。これが賛成136、反対16で支持された。

これを受けてレッタ首相は、政権運営に行き詰ったと判断し、幹部会の終了後に辞意を表明。14日にナポリターノ大統領に辞表を提出した。

民主党は昨年2月に実施された総選挙で、下院では過半数の議席を確保したが、上院では過半数割れとなり、2カ月にわたる政治空白を経て、財政緊縮・構造改革で立場の違うベルルスコーニ元首相率いる中道右派勢力、モンティ前首相の中道勢力との連立で合意。4月に新政権が発足した。

しかし、最大の課題である財政再建の象徴として注目されていた不動産税の復活、付加価値税(VAT)の引き上げが、中道右派の強い抵抗で実現できないなど、改革が停滞。9月には、中道右派の自由国民が路線対立から同党所属の閣僚5人全員を引き揚げるなど、政権の基盤も脆弱だった。

さらに状況が悪化するきっかけとなったのは、フィレンツェ市長を務めるレンツィ氏の昨年12月の民主党書記長への就任。新たな改革の旗手として若者を中心に人気が高まっているレンツィ氏から突き上げが強まり、党内が権力闘争の様相を帯び、政権の求心力が急速に弱まった。

レンツィ書記長は39歳で、イタリア史上最年少の首相となる。国会議員の経験はないが、政治色の薄さと若さが国民の人気を集めている。ただ、国政経験のない同氏の政治手腕は未知数で、複雑な利害が絡む連立政権の舵取りを不安視する向きもある。

新政権発足には中道右派、中道勢力の協力が必要。連立政権に参加してきた中道勢力の「市民の選択」は支持を表明している。

ユーロ圏では債務危機が沈静化し、景気も緩やかに回復しているが、イタリアの景気回復はもたつき、失業率も12%を超えている。財政再建を軌道に乗せながら、景気を回復することが新政権の最大の課題となる。