2014/2/24

総合 –EUウオッチャー

銀行破綻処理の統一基金、独が完全整備前倒し容認へ

この記事の要約

ドイツのショイブレ財務相は18日に開かれたEU財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理に活用する統一基金の創設について、前倒しで進めることに応じる姿勢を示した。10年をかけて基金を完全に整備するという加盟国の合意案に対し […]

ドイツのショイブレ財務相は18日に開かれたEU財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理に活用する統一基金の創設について、前倒しで進めることに応じる姿勢を示した。10年をかけて基金を完全に整備するという加盟国の合意案に対して、欧州中央銀行(ECB)と欧州議会が遅すぎるとして反発していることを受けたもの。整備期間の短縮に抵抗していたドイツが、条件付きではあるものの妥協の姿勢を示したことで、調整の難航が打開される可能性が出てきた。

EUは銀行同盟創設の第2段階として、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」制度の導入を決定。加盟国は昨年12月の首脳会議で、制度設計について合意した。

その柱のひとつである「単一破綻処理基金」は、銀行同盟の第1段階である大手銀行の監督を一元化する制度に基づき、ECBの監督対象となる銀行が破綻し、救済が必要となった場合に活用されるもの。首脳会議での合意では、各国が国内銀行の拠出によって個別に創設する基金を10年間で段階的に統合し、最終的に総額550億ユーロの統一基金とすることになっている。

同案をめぐっては、ECBのドラギ総裁が、金融安定化のために重要な同基金が完全に機能するまで10年もかかるのは問題だとして、基金統一までの期間を5年に短縮するよう要求。欧州議会も同調し、2月初めに加盟国の合意案を否決したため、再調整が必要となっている。

英フィナンシャル・タイムズによると、ドイツが期間短縮に抵抗している背景には、同国がユーロ圏で唯一、独自の同様の基金を設けており、その管轄権のEUへの委譲を遅らせたいという思惑が働いていることがある。しかし、基金創設には欧州議会の承認が必要で、4月中に承認を取り付けなければ議会が5月に改選され、手続きがストップしてしまうことから妥協の姿勢に転じた。ただし、ショイブレ財務相は、短い期間で基金を550億ユーロまで積み上げて完全整備するに当たって、各国が拠出することなく、銀行の拠出を迅速化する形で実施することを条件として要求した。

破綻処理の一元化では、処理決定のシステムが複雑化され、当初の案と比べて各国の利害が入り込む余地が生じたことも問題視され、欧州議会が反発している。基金をめぐる問題ではドイツの態度軟化で打開の糸口が見えたが、なお大きな課題があり、欧州議会と期限内に最終合意できるか微妙な情勢だ。