2014/2/24

総合 –EUウオッチャー

英が新たな移民規制強化策、社会保障給付を制限

この記事の要約

英政府は19日、中東欧など他のEU加盟国からの移民の流入を制限するため、社会保障給付の受給資格を厳格化する方針を打ち出した。自国より整った社会保障制度を目当てに域内の他の国に移動する「社会保障ツーリズム」の横行を防ぐため […]

英政府は19日、中東欧など他のEU加盟国からの移民の流入を制限するため、社会保障給付の受給資格を厳格化する方針を打ち出した。自国より整った社会保障制度を目当てに域内の他の国に移動する「社会保障ツーリズム」の横行を防ぐための措置で、週当たりの収入が150ポンド以上であることを失業手当や児童手当などの受給要件とするという内容。3月1日から実施される見通しだが、欧州委員会は域内における労働者の自由な移動を保障 したEUの原則に反するとの見方を示し、同措置について慎重に精査すると警告している。

EUでは原則として加盟国が相互に労働市場を開放し、労働者が国境を超えて自由に移動できるようになっている。2007年にEUに加盟したルーマニアとブルガリアに関しては、移行措置として他の加盟国に就労制限の設定が認められていたが、最大7年の期限が2013年末で終了し、今年1月から域内全域での就労が自由化された。

一方、英国では反EUや移民排斥を掲げる英国独立党(UKIP)が国民の支持を集めており、与党・保守党内では15年に実施される総選挙をにらんでキャメロン首相に移民規制強化を求める声が高まっている。こうしたなかで同首相は昨年11月、英入国から3カ月(従来は1カ 月)は求職者手当などの受給資格を認めない◇給付期間を最長6カ月に制限する◇路上生活や物乞いを行っている移民を国外退去とし、1年間は再入国を禁止する――などの措置を打ち出している。

新たに導入される移民規制強化策は、週24時間労働の最低賃金に相当する週150ポンド以上の収入がある移民を「就労者」とみなし、社会保障給付の受給資格を認めるという内容。基準に満たない場合は個別に審査を行い、支給対象となる「就労者」または「求職者」に該当するかどうか判断する。ダンカン・スミス雇用年金相は「就労者や求職者をサポートする一方、手厚い社会保障制度を目当てとした移民の流入を認めないための公正なシステムだ」と強調している。

これに対して欧州委の報道官は、EU 加盟国は他の加盟国からの労働者を自国民と同等に扱わなければならず、「収入によってランク付けするアプローチはEU法に合致しない」と指摘。「新たな移民規制策の妥当性について慎重に検証する」と述べた。