2014/3/10

産業・貿易

伊など3カ国のマクロ経済不均衡は「過剰」、欧州委が報告書で指摘

この記事の要約

欧州委員会は5日、ユーロ危機を受けたガバナンス改革の一環として導入されたマクロ経済不均衡是正手続き(MIP)に基づき、EU加盟国のうち過剰なマクロ不均衡のリスクが認められる17カ国を対象とした報告書を公表した。欧州委は英 […]

欧州委員会は5日、ユーロ危機を受けたガバナンス改革の一環として導入されたマクロ経済不均衡是正手続き(MIP)に基づき、EU加盟国のうち過剰なマクロ不均衡のリスクが認められる17カ国を対象とした報告書を公表した。欧州委は英国、ドイツ、フランス、スペインを含む14カ国に経済不均衡がみられるとし、このうちイタリア、スロベニア、クロアチアについては不均衡が「過剰」な水準にあると警告。3カ国に対して是正措置を厳しく監視する方針を示している。

欧州委はMIPの第1段階として、昨年11月に各国のマクロ経済指標を比較した「スコアボード」に基づき、マクロ不均衡の潜在的リスクの有無を評価した「警告メカニズム・レポート」を公表。警告レポートで過剰な不均衡のリスクがあるとみなされた16カ国と、EUとIMFによる包括支援プログラムの終了に伴い、新たにMIPの対象となったアイルランドを加えた17カ国についてマクロ不均衡のリスクをより詳細に分析し、今回のレポートをまとめた。

まずイタリアに関しては、「慢性的な生産性の伸び悩み」が経済成長を妨げており、「極めて高い水準の公的債務と弱い国際競争力」に対処する必要があると指摘。同国政府に対し、財政収支を大幅に改善して公的債務を「持続可能な水準」まで引き下げ、イタリア国内およびユーロ圏経済に悪影響を及ぼす可能性のあるリスク要因を早急に取り除くよう求めている。

これに対し、昨年の詳細レポートで過剰な不均衡を指摘されたスペインに関しては、「高い失業率と政府および民間の重い債務」が引き続き重大なリスク要因になっているものの、過去1年間の大幅な財政調整が一定の効果を上げており、「不均衡は過剰とはいえない」と指摘した。

一方、フランスについては貿易収支の悪化と国際競争力の低下を特に問題視している。欧州委は依然として「高い労働コストが企業にとって重い負担となり、製造業を中心に企業の収益率が低下している」と指摘。ただちに政府が行動を起こして財政再建に向けた構造改革を推進しない限り、財政赤字削減目標を達成することは難しいとの見方を示している。

また、ドイツに関しては、拡大する経常黒字が欧州経済の安定を阻害するリスク要因になっているものの、経常黒字を国内への投資に回すとともに、内需を拡大することで輸出が増え、域内の不均衡を是正することができると指摘。「経済不均衡が生じているものの、過剰な水準とはいえない」と指摘している。

欧州委はマクロ経済不均衡が過剰と評価された3カ国とアイルランド、スペイン、フランスに対し、是正措置の実施状況を注意深く監視し、EU閣僚理事会とユーログループに定期的に進捗を報告する方針を示している。なお、不均衡が過剰とされた国は対応が不十分とみなされた場合、名目GDPの0.1%相当の制裁金を科される可能性がある。