2014/3/10

産業・貿易

英銀が株式での固定額支給を相次ぎ発表、EU賞与規制の迂回策で

この記事の要約

英国の大手銀行の間で幹部行員を対象に、給与とボーナスの他に固定額を株式で支払う新たな報酬制度を導入する動きが相次いでいる。ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額(株主の承認があれば最大2倍)に制限するEUの規制を迂回 […]

英国の大手銀行の間で幹部行員を対象に、給与とボーナスの他に固定額を株式で支払う新たな報酬制度を導入する動きが相次いでいる。ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額(株主の承認があれば最大2倍)に制限するEUの規制を迂回するのが狙いで、欧州議会ではこうした規制逃れを防止するための対抗策を検討する動きが出始めている。

EUは昨年、EU域内に本社や現地法人を置くすべての銀行の取締役、上級管理職、トレーダーなどを対象とする賞与規制で合意。世界有数の金融センターを抱える英国は、人材流出の懸念などを理由に最後まで賞与規制に反対していたが、新規制は今年1月1日付で発効しており、2014年の業績に基づいて支払われる来年のボーナスから適用される見通しになっている。

英銀大手バークレイズとロイズ・バンキング・グループは5日、上級管理職などに年間給与の最大2倍のボーナスを支給する報酬体系を打ち出し、5月の年次株主総会で承認を求める方針を明らかにした。EUルールによると、銀行員のボーナスは原則として年間給与と同額が上限となるが、65%を超える株主の承認があれば給与の最大2倍まで支給することができる。

両行はまた、基本給やボーナスと関係なく、固定額を株式で支払うスキームの導入を明らかにした。HSBCホールディングスが2月に発表した報酬制度とほぼ同じ内容で、ロイズのアントニオ・ホルタオソリオ最高経営責任者(CEO)の場合、14年は年間給与110万ポンド、ボーナスのうち現金による即時支給分150万ポンドに加え、株式で90万ポンド相当が支払われる。これにボーナスの繰延べ分などを含めると、支給額は最大780万ポンドに達する計算だが、同CEOが実際に受け取る報酬は490万ポンド前後になるとみられている。ロイズによると、昨年の支給額は年金などを含めて総額450万ポンドだった。一方、バークレイズのアントニー・ジェンキンス最高経営責任者(CEO)の今年の報酬体系は年間給与110万ポンド、ボーナスの即時支給分が最大190万ポンド、株式による支給額が95万ポンドなどとなっており、ボーナスの繰延べ分などを含めた総額は最大720万ポンドに達するもようだ。

一方、バークレイズによると、同行では13年に大幅減益となったにもかかわらず、ボーナス支給額は前年比10%増の総額24億ポンドに達した。報酬額が100万ポンドを超えた行員が481人に上ったほか(前年は428人)、報酬額が250万ポンド、500万ポンドを超えた行員もそれぞれ54人、8人いたという。

欧州議会経済・金融問題委員会のボウルズ委員長はロイター通信の取材に対し、「ルールを決めても迂回されてしまえばまったく意味がない」と発言。賞与規制をさらに厳格化する必要があるとの考えを示し、10日に委員会を招集して英銀の決定について協議する方針を明らかにした。

また、英議会財務特別委員会のアンドリュー・タイリー委員長も「多くの銀行が今年のボーナス交渉に報酬規制を反映させていないことは極めて遺憾だ」と発言。大手行の対応を強く非難し、「今こそ規制当局が役割を果たすべきだ」と述べた。