2014/3/17

産業・貿易

銀行破綻処理一元化の交渉難航、今週が正念場に

この記事の要約

ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する制度の創設に向けた調整が難航している。EU加盟国は10、11日に開いた財務相理事会で、昨年12月のEU首脳会議で合意した案に反発する欧州議会に対する妥協案をまとめたが、議会側の要求とは […]

ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する制度の創設に向けた調整が難航している。EU加盟国は10、11日に開いた財務相理事会で、昨年12月のEU首脳会議で合意した案に反発する欧州議会に対する妥協案をまとめたが、議会側の要求とはなお大きな隔たりがあり、妥結は困難な情勢。合意期限が迫る中、交渉は今週に正念場を迎える。

銀行の破綻処理を一元化する「単一破綻処理メカニズム(SRM)」制度は、大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)一元化する制度に続く銀行同盟の第2段階。ECBの監督対象の対象となる銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた場合に、ECBの通告を受けて破綻処理委員会が対応策を協議し、救済して再建するか閉鎖するかを決め、銀行の拠出によって創設される「単一破綻処理基金」を使って処理を進めるという仕組みだ。2015年1月の発足を予定している。

昨年12月のEU首脳会議では、破綻処理基金について、2026年までの10年間で各国ベースの基金を段階的に統合し、最終的に総額550億ユーロの単一基金とすることや、破綻処理決定の枠組みで合意した。しかし、これに欧州議会が反対し、承認を取り付けられない状況にある。

破綻処理一元化を予定通り発足させるためには、月内に加盟国と欧州議会が合意する必要がある。5月に選挙が実施される欧州議会の解散が迫っており、4月中に議会を通過しないと始動が大幅に遅れるためだ。EUは加盟国と欧州議会が今週中に合意し、欧州議会が4月14~17日に開かれる本会議で採択することを想定している。

加盟国と欧州議会の主な対立点は、単一破綻処理基金を完全整備するまでの期間と、破綻処理決定システムの中身。欧州議会は基金について、550億ユーロ体制となるまで10年を要するのは長すぎるとして、期間短縮を求めている。途中で基金が不足した場合は、これまでと同じく銀行救済に公的資金を投入することになるため、破綻処理一元化の理念に反するという主張だ。破綻処理策の決定に関しては、合意案は複雑で、しかも加盟国が大きな影響力を行使できることから、政治的利害が絡んで決定が遅れかねないとして、原案を復活して欧州委に最終権限を与えることを要求している。

今回の財務相理事会で合意した見直し案の詳細は不明だが、基金完全整備の期間短縮、決定システムの効率化で欧州議会に歩み寄った。しかし、ロイター通信などの報道によると、期間短縮は2年と、欧州議会側が求める7年と大きな開きがある。破綻処理決定でも、修正は一部にとどまっている。このため、近く開かれる加盟国と欧州議会の代表による協議での合意は難しい見込みで、加盟国が20~21日の首脳会議でさらに踏み込んだ修正を迫られるとの観測が浮上している。