2014/3/31

産業・貿易

新たな長期資金調達手段を発表、企業年金・証券化市場を積極活用

この記事の要約

欧州委員会は27日、新たな手段による長期資金調達を可能にし、EU経済を活性化するための政策パッケージを発表した。経済・金融危機の影響で金融機関からの資金調達が困難になっている現状を踏まえ、年金基金の活用や証券化市場の活性 […]

欧州委員会は27日、新たな手段による長期資金調達を可能にし、EU経済を活性化するための政策パッケージを発表した。経済・金融危機の影響で金融機関からの資金調達が困難になっている現状を踏まえ、年金基金の活用や証券化市場の活性化などを通じてとりわけ中小企業が資金源にアクセスしやすい環境を整えるのが最大の狙い。長期的な資金調達を可能にして通信・輸送・エネルギーなど主要セクターのインフラ整備を推進し、経済成長と雇用創出を実現する。

欧州委によると、EU市場では銀行融資が調達資金全体の3分の2を占め、この割合は米国の約2倍に上る。しかし、経済・金融危機の影響で現在も銀行による貸し渋りが続いており、2013年に満額融資を受けた中小企業はオランダとギリシャで3分の1、スペインとイタリアでも約半数にとどまっている。欧州委は持続的な経済成長と投資の条件として、金融機関に頼らない、新たな資金調達手段を確保する必要があると判断し、具体策を検討していた。

欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は「欧州経済がようやく回復基調に乗り、今後は強力に経済成長を後押ししなければならない。銀行や機関投資家が実体経済を支えるための資金力を回復する必要があることは言うまでもないが、それと並行して資金源を多様化し、欧州経済の要である中小企業が資金調達しやすい環境を整えることが重要だ」と述べた。

欧州委は新たな資金調達手段として、企業年金に関する現行ルールを見直し、総資産額2兆5,000億ユーロに上る年金基金を活用できるようにする方針を打ち出した。一方、サブプライムローンなどが金融危機の原因となったことで敬遠されている債権の証券化市場を活性化し、資本市場を活用した資金調達を拡大して企業に新たな選択肢を提供する。欧州委の政策パッケージにはこのほか、経済開発を支援する政府系金融機関や輸出信用機関などの公的機関が保有する資産の活用、インターネット経由で不特定多数の人から資金を集めるクラウドファンディングの活用支援などが盛り込まれている。