暗号資産包括規制「MiCA規則案」、欧州議会と加盟国が基本合意

欧州議会とEU加盟国は6月30日、暗号資産(仮想通貨)に関する包括的な規制案の内容で基本合意した。「暗号資産市場(MiCA)規則」案は、暗号資産関連のサービスを提供する事業者に対し、加盟国の規制当局から認可の取得を義務付けることや、気候変動への影響について情報開示を求めることなどを柱とする内容。欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て、2023年中の新ルール導入が見込まれる。

規則案は欧州委員会が20年9月に発表した。ビットコインをはじめとする暗号資産に関する関心が高まる中、金融システムの安定性を維持し、消費者と投資家を保護するのが目的。世界的にみて暗号資産に関する規制は整備されておらず、EUの規則案が米国などでの議論に影響を与える可能性がある。

MiCA規則案は暗号資産の発行事業者だけでなく、顧客の暗号資産を保管する事業者や暗号資産の取引プラットフォームなどを含む、暗号資産関連サービスのプロバイダー(CASP)に適用される。すでに金融商品市場指令(MiFID)などの規制対象となっている金融商品や電子通貨などには適用されない。

規則案によると、事業者はEU域内に物理的な拠点を置く必要がある。事業の開始にあたり、加盟国の規制当局から認可を得なければならないが、「EUパスポート制度」に基づき、1カ国の認可でEU全域での事業が可能となる。

ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用して暗号資産の取引データをネットワーク上で管理する際、第三者による取引の承認や確認作業が行われるが、こうしたマイニング(採掘)には膨大な計算作業が必要で、多くのコンピュータや冷却装置が使用される。その際に消費される電力が石炭などの化石燃料由来である場合、大量の温室効果ガスを発生させる。このため、事業者に気候変動への影響を開示するよう義務付ける。

米ドルやユーロなど法定通貨に裏付けされた「ステーブルコイン」に関しては、発行者を欧州銀行監督局(EBA)の監督下に置き、十分に流動性のある準備金を積み立てるよう義務付ける。ステーブルコインの保有者には、いつでも無料で資金の返還を請求できる権利を与え、消費者保護を徹底させる。

一方、ブロックチェーン技術用いて作成される「非代替性トークン(NFT)」と呼ばれるデジタル資産は、原則的にMiCA規制の対象から除外される。NFTは貨幣や株式など「代替可能」な資産とは対照的に、代替不可能な送信権が入った唯一無二のデータ単位を指し、例えばデジタルアート作品やスポーツカードなどがある。欧州委はNFTについて18カ月以内に包括的な評価を行い、流通状況などから必要と判断した場合は新たな規制の導入を視野に、リスクに対処するための具体策を検討する。

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