空港発着枠ルール柔軟化を提案、不測の事態に使用率基準引き下げ可能に

欧州委員会は12日、EU域内の空港の発着枠に関するルールをより柔軟なものにすることを提案した。新たな感染症の流行や戦争といった不測の事態に際し、運航実績がEUの定める基準を下回った場合でも、航空会社が発着枠を維持できるようにするための措置。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て、冬ダイヤがスタートする10月30日から新ルールを適用する。

現行ルールでは、航空会社に割り当てられた発着枠の使用率が80%を下回ると、枠を継続利用する権利が失われる。新型コロナウイルスの感染拡大で航空需要が落ち込み、各社とも大幅な減便を余儀なくされたことから、2020年3月以降は発着枠に関するルールが緩和され、現在は使用率の基準が64%に引き下げられている。

欧州委は航空需要がコロナ禍以前の水準近くまで回復していることから、10月30日付で発着枠の使用率基準を従来の80%に戻す一方、不測の事態で計画通りの運航が困難になった場合、基準を下回っても発着枠を維持できる「発着枠の正当な不使用(justified non-use of slots=JNUS)」と呼ばれる特例措置の適用期間を24年3月末まで延長することを提案した。

特例が適用されるケースとしては、新たな感染症や自然災害、政情不安などが想定されている。また、新型コロナをはじめとする公衆衛生上の脅威やウクライナ情勢の悪化などにより、フライト数が4週連続で19年の水準を80%以上下回った場合、欧州委の権限で発着枠の使用率基準を引き下げることができる。

欧州委はさらに、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、現在は停止しているEUとウクライナを結ぶ航空路線の再開に向けた措置も打ち出した。具体的にはウクライナ便の運航が再開された場合、発着枠をめぐるルールを適用するまで16週間の猶予期間を設けることや、発着枠の使用率基準を引き下げるための委任規則の導入を提案している。

欧州委のヴァレアン委員(運輸担当)は声明で「航空需要は明らかに回復しており、公正な条件で発着枠を効率的に運用するため、使用率を従来の基準に戻すべきだと判断した。それと同時に、不測の事態への備えをより万全なものにする必要がある。JNUS(発着枠の正当な不使用)条項は危機的状況に対応するための効果的なツールであり、状況に応じて特例措置を適用できる体制を維持することで、公衆衛生上の脅威やウクライナ情勢の悪化などによって航空業界が再び深刻な打撃を受けた場合でも、より柔軟な対応が可能になる」と強調した。

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