欧州委員会は14日、米アマゾン・ドット・コムが自社の運営するオンライン市場で他社のデータを不正に利用した疑いで調査している問題をめぐり、アマゾン側から欧州委が指摘する競争上の懸念を解消するための譲歩案が提示されたことを明らかにした。9月9日まで競合他社などから意見を聞いたうえで、アマゾンの提案を受け入れて調査を打ち切るかどうか判断する。
欧州委はアマゾンの電子商取引プラットフォーム「マーケットプレイス」を利用する小売業者からの苦情を受け、2019年7月に本格調査を開始した。それによると、アマゾンはプラットフォームの運営者として出店業者の注文数や出荷数、売り上げなどの非公開データにアクセスし、それらのデータを利用して売れ筋商品の類似品を販売したり、価格を調整するなど、小売業者としてのビジネスを有利に展開していた。欧州委はこうした商慣行により、アマゾンはオンライン小売市場における競争を歪めているとの見解をまとめ、同社に対し20年11月に異議告知書を送付した。
また、欧州委は同時に、アマゾンの「Buy Box」(日本ではショッピングカートボックスと呼ばれる)と有料会員向けプログラム「プライム」について、新たな調査を開始した。Buy Boxを獲得した出品者の商品はサイト上で有利な位置に表示され、利用者が「カートに入れる」ボタンを押すと当該商品を購入できる仕組みで、プライム会員に効果的にアプローチすることもできる。欧州委はアマゾンがBuy Boxの獲得者を選択する際、アマゾンの配送サービスを利用する小売業者を優遇している可能性があるとして調査を進めていた。
欧州委によると、アマゾンは譲歩案として、マーケットプレイスで得られる小売業者のデータを競合する自社の事業のために利用しないことを確約。Buy Boxとプライム会員への商品提供についてはマーケットプレイスを利用するすべての小売業者を公平に扱い、選定された事業者は利用する配送サービスを自由に選べるようにすることを約束した。
最終的に欧州委が競争法違反と認定した場合、アマゾンは巨額の制裁金を科される可能性があったが、自主的に譲歩案を提示したことで、早期に調査が打ち切られ、制裁金を免れる可能性が高まった。ただし、欧州委が譲歩案を受け入れた場合、アマゾンは5年間にわたり確約した措置を実施しなければならず、違反した場合は制裁金(世界全体の売上高の最大10%)を科される可能性がある。