リトアニアが11日、自国領を通ってロシア本国とロシアの飛び地領カリーニングラード州との間を行き来する貨物の取締りを強化した。EUの対ロシア制裁の厳格化に伴うもので、新たにコンクリート、木材、アルコール、アルコールベースの産業用化学品が対象となった。ロシア産天然ガスの主な欧州向け輸出手段の一つである「ノルド・ストリーム」が稼働を停止するという懸念が高まるなかの出来事で、EUとロシアの対立が先鋭化する可能性がある。制裁実施に向けた欧州の決意のほどが試されそうだ。
リトアニアは先月17日以来、対ロ制裁の一環として、自国の鉄道・道路を経由して制裁リストにある製品をカリーニングラード州およびロシア本国へ輸送することを禁じている。実施に当たってはEUに事前に確認したとされるが、欧州委員レベルで判断が下されたかどうかははっきりしていない。
ロシアは当初からリトアニアの禁輸措置に強く反発し、報復をちらつかせている。EU側は、基本的には「国内輸送」である事実を考慮し、リトアニア経由の物流の制限を解除する方向でリトアニア政府の同意を求めた。しかし、政府は「ロシアへの小さな妥協も許さない」国内世論の動向や、同措置を撤回すれば連立政権が倒壊するという見通しを理由に、要請を受け入れていない。さらに、EUの禁輸品目拡大に応じて、今回、ロシア―カリーニングラード間の輸送制限も強化するに至った。
ロシアは、輸送制限強化を控えた今月8日にも、カリーニングラード州と本国との貨物輸送が「数日以内に」全面的に復活しなければ、リトアニアおよびEUに「厳しい措置」をとると改めて警告していた。ただ、貨物輸送制限措置の導入直後に聞こえたような声高な抗議がその2~3日後におさまったため、「制限」は建前だけで、実際には輸送が機能しているのではという見方もある。
ロシアとEUとの関係では、ロシアとドイツを結ぶバルト海パイプライン「ノルド・ストリーム」の保守作業が終了する21日以降、ロシアが天然ガス輸送を再開しないのではないかという懸念も浮上している。 カリーニングラードはリトアニアとポーランドに国境を接し、リトアニア領を走る鉄道や道路を通じて多くの製品を調達している。なお、食品などの必需品や人道的目的に適合する製品は輸送制限の対象から外されている。