ドイツ政府は22日、エネルギー大手ユニパーを救済すると発表した。国内のエネルギー供給で重要な役割を果たす同社が経営破たんすると経済や社会生活に深刻な影響が出ることから、出資や融資支援を行い底支えする。調達コストの膨張が天然ガス輸入会社の資金繰りを急速に悪化させていることを踏まえ、同コストを川下に迅速転嫁するルールの解禁方針も打ち出した。
ユニパーは8日、公的支援を申請した。ロシアからの天然ガス供給の大幅減を受けて調達コストが大きく膨らみ、資金繰りに懸念が出てきたためだ。調達価格が上昇しても、一定期間内は値上げできず、国内の顧客に契約で定められた量を供給しなければならないという事情がある。1日当たり千万ユーロのケタ台半ばの損失が出ており、年末までに計100億ユーロに膨らむ恐れがある。
政府はこの事情を踏まえ、救済を決定した。天然ガス調達に伴う損失が他の事業の利益で穴埋めしても70億ユーロを超えた場合、支援を行う。政策金融機関KfWの融資枠を従来の20億ユーロから90億ユーロに拡大するほか、第3者割当増資を通して約30%の出資を行う。出資額は2億6,700万ユーロ。1株当たりの取得額は1.70ユーロで、前日の終値(10.50ユーロ)を大幅に下回る。国はこのほか、転換社債を最大77億ユーロ引き受ける。
国の出資を受け、ユニパーの親会社であるフィンランド国有エネルギー大手フォータムの出資比率は現在の78%から約56%に低下する。
国が支援を行うためにはユニパーの株主と、欧州連合(EU)欧州委員会の承認が必要となる。ユニパーは臨時株主総会を招集して同意を得る意向だ。
エネルギー安定確保法(EnSiG)には調達価格の上昇分を川下に速やかに転嫁するための特別ルールが2種類、定められている。1つは調達価格の上昇分を川下に直接転嫁するというもの、もう1つはガス料金に上乗せされる分担金を通してすべての需要家に負担させるというものだ。ショルツ首相は同日、「均等価格調整メカニズム」と呼ばれる分担金方式を9月1日または10月1日に解禁する意向を表明した。
これに伴いガス料金は確実に上昇する。ショルツ氏によると、分担金は1キロワット時当たり2セント。ガス料金は4人世帯で年200~300ユーロ増加する。政府は市民の新たな負担軽減策を実施する方針だ。