欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/9/12

西欧

独が原発廃止を4カ月半延期、残存3基中2基を予備電源化

この記事の要約

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相(緑の党)は5日、原子力発電からの撤退時期を当初計画の今年末から来年4月中旬に延期する方針を明らかにした。ロシア産天然ガスの供給削減・停止を受け冬季にエネルギー不足に陥る懸念を排除 […]

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相(緑の党)は5日、原子力発電からの撤退時期を当初計画の今年末から来年4月中旬に延期する方針を明らかにした。ロシア産天然ガスの供給削減・停止を受け冬季にエネルギー不足に陥る懸念を排除できないことから、残存する3基のうち2基を予備電源に組み込み、需給がひっ迫した場合に投入できるようにする。

ドイツは今年末までの原発全廃を法律で定めている。だが、ウクライナに侵攻し制裁を科されているロシアが報復として欧州向けの天然ガス供給を削減、停止していることから、ロシア産ガスへの依存度の高いドイツでは冬季にエネルギーが不足する可能性がある。政府はこれを踏まえ、送電網運営4社に調査(ストレステスト)を依頼した。

4社の調査報告は、2022~23年冬季に電力不足が発生する可能性はほとんどないとしながらも、リスクを100%排除することはできないと結論付けたことから、政府は原発を予備電源として来春まで存続させることにした。

ドイツでは現在、エムスラント、イザール2、ネッカースヴェストハイムの3原発が稼働している。政府はこのうち同国南部にあるイザール2とネッカースヴェストハイムを予備電源に組み込む。北部にあるエムスラントは計画通り今年末で廃止する。

南部地域は◇原発依存度が高かった◇それに代わる電源が少ない◇独北部で発電した電力を南部に送る送電網の整備が遅れている――ことから、電力不足の発生リスクが相対的に高いという事情がある。

緑の党は反原発を原点とする政党であることから、ハーベック氏は原発の稼働延長に否定的な立場を取ってきた。だが、国内の電力事情が厳しく、経済界や野党だけでなく連立与党の自由民主党(FDP)からも批判を受けていたことから妥協。原発を万が一の場合に利用する予備電源とすることにした。予備電源への指定期間は4カ月半と短く、新たな燃料棒を投入することは認めない方針だ。