ハンガリー政府は19日、公共調達などをめぐる汚職防止に向けた法案を議会に提出した。欧州委員会は18日、同国が「法の支配」の原則に違反しているとして、EU予算の配分を一時停止する措置を加盟国に提案しており、ハンガリー側はこれを回避するため、8月に提示した改善策を実行に移したもの。バルガ司法相はEU予算が完全な形で執行されるよう、早期に17項目の改善策をすべて実施する方針を示している。
法の支配の順守を予算配分の条件とする規則は、EU予算の不適切な使用を防止する目的で20年12月に採択されたもの。ハンガリーとポーランドは法的根拠に欠けるなどと主張し、無効化を求めて提訴したが、EU司法裁は今年2月、同規則を適法とする判断を示して両国の訴えを退けた。これを受けて欧州委は4月、汚職や腐敗防止の取り組みが不十分との理由から、ハンガリーに対して同規則を発動する手続きを開始した。21年1月のルール導入後、初のケースで、是正されなければ閣僚理事会の特定多数決により、EU予算の執行を一時停止するなどの措置がとられることになる。
ハンガリー側は制裁回避に向け、EU予算の支出先や使途を監視する独立機関および汚職対策のための作業部会の設置、公共調達の適正化に向けた取り組みの強化、公共調達に係る手続きの電子化、欧州不正対策局(OLAF)との連携強化など、17項目からなる改善策を欧州委に提示した。しかし、進捗が遅いとして欧州委は18日、2021~27年の予算枠組みでハンガリーに配分される結束基金のうち、約3分の1に相当する約75億ユーロの交付を一時停止することを加盟国に提案した。公共調達や公共事業の事業者選定にあたり、入札参加が1社のみというケースが全体の約半数を占めている点や、利益相反の弊害防止の取り組みなどを問題視しており、特に教育分野で多額の資金を運用する一部の公益信託にEU予算が投入されることに難色を示している。
ハンガリー政府が策定した汚職防止法案によると、OLAFとハンガリー当局の協力体制に関する規則が改正され、EU予算が投入されたプロジェクトについて調査する際、OLAFは税務当局の協力を得て当該事案に関する詳細データや文書に迅速にアクセスできるようになる。また、国営の資産管理機関に関する規則を改正し、公共調達の適正化に向けて入札を明示的に義務付けるとともに、利益相反管理に関するルールを厳格化することなどが盛り込まれている。