ドイツ政府は21日、天然ガス調達コストの膨張で資金繰りが急速に悪化しているエネルギー大手ユニパーを国有化する計画を発表した。天然ガス輸入最大手の同社が経営破たんすると国内のエネルギー安定供給が損なわれ市民生活と経済に甚大な影響が出ることから、国有化してそうした事態を回避する考えだ。ユニパー株主と欧州連合(EU)欧州委員会の承認を経て実施する。
国はユニパーが行う第3者割当増資を単独で引き受け、80億ユーロを出資するほか、現在の親会社であるフィンランド同業のフォータムが持つ株式78%を約4億8,000万ユーロで取得する。取得価格はともに1株当たり1.70ユーロ。取引が完了すると国の出資比率は約99%に達する。
フォータムはこれまで融資と融資保証を通してユニパーを支援してきた。総額は80億ユーロ。国の出資後はフォータムに融資が全額返済され、融資保証は解消される。
ユニパーは7月、公的支援を受けることで政府と合意した。この時点では国の出資比率を30%とする計画だったが、ロシアがその後、欧州向けの天然ガス供給を停止したことで状況が一段と悪化していることから、支援を拡大し国有化することが避けられなくなった。政策金融機関KfWの融資枠は8月末時点で従来の90億ユーロから130億ユーロに引き上げられている。
ロシア産天然ガスへの依存度が高かった国内のガス会社は軒並み、資金繰りが悪化しており、天然ガス輸入3位のVNGは今月上旬、連邦経済・気候省(BMWK)に公的支援を申請した。露国営天然ガス会社ガスプロムの元子会社で独2位のセキュアリング・エナジー・フォー・ヨーロッパ(SEFE=旧ガスプロム・ゲルマニア)は連邦ネットワーク庁の信託管理下に置かれ、これまでに国から約100億ユーロの融資を受けた。政府はこの融資分を出資へと改めることを検討中だ。