英政権が大規模減税策を撤回し財務相解任、トラス首相が就任1カ月で正念場

英国のトラス首相は14日、クワーテング財務相を解任するとともに、法人税率の引き上げ凍結を撤回した。今月3日には所得税の最高税率引き下げを撤回しており、トラス政権は発足から1カ月余りで主要政策を相次いで撤回したことになる。目玉と位置づける大規模減税策の抜本的な見直しを余儀なくされたことで、与党・保守党内でも首相の責任を問う声が強まっており、トラス氏は早くも正念場に立たされている。

トラス氏は記者会見で「財政規律を保ち市場を安心させるため、直ちに行動しなければならない」と述べ、法人税率の引き上げを凍結するとしていた経済政策の撤回を表明。直接の責任者であるクワーテング氏を更迭し、後任にハント元外相を充てる人事を発表した。クワーテング氏の在任期間は38日で、英BBCによると、財務相の就任期間としては史上2番目の短さとなった。

トラス氏は大型減税で経済成長を促す政策を掲げて保守党党首選に勝利し、9月6日に首相に就任した。同23日には総額450億ポンド(約7兆円)の減税策を発表したが、同時に半年で600億ポンドの家庭および企業向けエネルギー対策を打ち出す一方、財源確保の具体策が示されなかったため、財政悪化への懸念から国債金利が急騰し、通貨ポンドも急落。国際通貨基金(IMF)は27日、「対象を絞らない大規模な財政パッケージは推奨しない」との声明を発表した。

こうした中でイングランド銀行(中央銀行)は28日、緊急措置として10月14日までの期限付きで長期国債の買い入れを発表。また、富裕層に対する優遇との批判を受け、クワーテング氏は今月3日、年収15万ポンド以上の高所得者向けの所得減税を撤回すると発表した。ただ、大型減税策の一部を撤回しても財政負担の軽減にはつながらず、政策の抜本的な見直しを求める声が高まっていた。

14日の記者会見でトラス氏は「成長をもたらし、英国を豊かにするという約束をやり遂げる」と強調。自身の辞任は否定した。

英調査会社ユーガブが11~12日に行った調査によると、保守党の支持率は23%にとどまり、野党・労働党の51%を大きく下回った。

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