欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/10/24

EU情報

EUがエネルギー高騰対策で大筋合意、ガス価格の上限設定は協議継続

この記事の要約

EUは20~21日にブリュッセルで首脳会議を開き、エネルギー価格の高騰を抑えるための緊急対策で大筋合意した。天然ガスの共同購入や、液化天然ガス(LNG)を含めた欧州ガス市場の状況をより正確に反映する新たな指標の開発、緊急 […]

EUは20~21日にブリュッセルで首脳会議を開き、エネルギー価格の高騰を抑えるための緊急対策で大筋合意した。天然ガスの共同購入や、液化天然ガス(LNG)を含めた欧州ガス市場の状況をより正確に反映する新たな指標の開発、緊急時における加盟国間のガス供給の融通などが対策の柱。焦点となっていた天然ガスの価格に上限を設ける案に関しては結論を先送りし、発電用の天然ガスの価格に上限を設定する制度について緊急に具体策をまとめるよう、閣僚理事会と欧州委員会に指示した。10月25日に開くエネルギー相理事会で協議を継続する。

21日未明まで約11時間に及んだ会議では、欧州委が18日に発表したエネルギー価格高騰への総合対策を土台に協議が行われた。首脳会議の総括文書は、「過度な価格上昇を制限するための一時的な措置」を導入する方針を明記。そのうえで、発電用の天然ガスに限定して価格上限を設定した場合の費用対効果を分析する必要があるとし、上限設定によるガス価格の低下がガス消費の増加につながる可能性などについて検討するよう欧州委に求めた。発電用ガスを対象とする上限価格の設定は、すでにスペインとポルトガルが導入している。

一方、加盟国は今月12日の非公式エネルギー相会合で、天然ガスの共同購入を進めることで合意していたが、総括文書には加盟国のガス備蓄の15%を共同購入する目標を盛り込んだ。ロシアのウクライナ侵攻を起点とする供給不足が続く中、加盟国間の獲得競争による価格上昇を防ぐとともに、価格交渉力を高める狙いがある。

ガス価格の指標に関しては、欧州における天然ガス価格の指標となっているTTFを補完して、LNGを含めたガス市場の動向をより正確に反映する新たな指標を開発し、2023年3月までの運用開始を目指すことで一致した。

このほかEU域内でガス不足が発生した場合、加盟国間でガス供給を融通する「結束メカニズム」の強化や、再生可能エネルギーの普及促進に向けた認可手続きの簡素化なども対策に盛り込んだ。

ガス価格の上限設定をめぐっては、フランスやイタリア、ポーランドなど15カ国が9月下旬、欧州委に書簡を送り、記録的な高インフレを抑制するため上限設定が必要と訴えた。これに対し、ドイツやオランダなどは価格が抑制されるとガス消費削減のインセンティブが弱まり、需要期の冬を乗り切るための「節ガス」の推進に水を差しかねないなどとして、上限設定に反対している。