スペイン、ポルトガルとフランスは20日、スペイン北東部バルセロナとフランス南部マルセイユを結ぶ海底パイプラインの建設を柱とするエネルギー供給網の強化で合意した。「BarMar」と呼ばれるパイプラインは主に水素や再生可能ガスを輸送するが、欧州のエネルギー危機を緩和するため、一時的に「限られた量」の天然ガスも輸送できるようにする。
ブリュッセルで開かれたEU首脳会議に合わせてフランスのマクロン大統領、スペインのサンチェス首相、ポルトガルのコスタ首相が会談し、3カ国と他のEU諸国を結ぶエネルギー網の強靭化について協議した。サンチェス氏は記者団に対し、海底パイプラインの新設は「プーチン(露大統領)の脅迫に直面するなかで、欧州のパートナーからの連帯の呼びかけに応えたものだ」と強調。マクロン氏は「欧州が結束を維持することが不可欠だ」と語った。
欧州各国がロシア産ガスの代替調達先の確保を急ぐなか、スペインは北アフリカなどから輸入するガスの輸送拠点となることを目指し、フランスの反対で中止されたピレネー山脈を越えてスペイン北東部とフランス南東部を結ぶパイプライン(通称MidCat)計画の再開を訴えていた。ロシア産天然ガスへの依存脱却を目指すドイツは同計画を支持したが、フランスはロシアへの依存度が低く相対的に危機感が薄いうえ、次世代型原子炉6基の建設を優先する方針を固めており、採算性や環境負荷の観点から最後まで反対の姿勢を崩さなかった。
フランス、スペイン、ポルトガルは今回、MidCat計画を放棄し、これに代わるプロジェクトとしてBarMarの建設を推進することで合意。スペインとフランスはこのほか、ビスケー湾を横断して電力網の相互接続を加速させることでも一致した。
3カ国は12月9日にスペインのアリカンテで再び首脳会談を開き、海底パイプラインの建設スケジュールや資金調達方法などを決定する。
スペインはアルジェリアから天然ガスの供給を受けるほか、米国やナイジェリアから液化天然ガス(LNG)を輸入しており、国内6カ所にLNGの再ガス化設備を併設したLNGターミナルを保有している。