欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/10/31

西欧

英新首相にスナク元財務相、政局安定へ主要閣僚は続投

この記事の要約

20日に辞意を表明した英トラス首相の後任として、与党・保守党の新党首となったリシ・スナク元財務相が25日、首相に就任した。英国史上初のアジア系かつ最年少の首相が誕生した。スナク氏はチャールズ国王から任命を受けた直後の就任 […]

20日に辞意を表明した英トラス首相の後任として、与党・保守党の新党首となったリシ・スナク元財務相が25日、首相に就任した。英国史上初のアジア系かつ最年少の首相が誕生した。スナク氏はチャールズ国王から任命を受けた直後の就任演説で、経済の安定と信頼回復を最優先課題と位置づけ、「言葉ではなく行動で英国を結束させる」と決意を表明した。

保守党の党首選は出馬を表明していたモーダント下院院内総務が撤退し、スナク氏は24日、無投票で新党首に選出された。モーダント氏は党所属下院議員357人のうち、立候補に必要な100人の推薦を確保できなかったもよう。動向が注目されていたジョンソン前首相も23日夜に出馬を断念しており、最終的に立候補したのは190人の推薦を獲得したスナク氏のみだった。

インド系のスナク氏は投資銀行勤務を経て2015年に下院議員に初当選。ジョンソン政権で財務相に就任したが、新型コロナ下の官邸で開かれたパーティーなどの不祥事が相次ぎ同政権への批判が高まる中、7月に辞任してジョンソン政権崩壊のきっかけとなった。前回の党首選では決選投票でトラス氏に敗れたが、トラス政権は年450億ポンド(約7兆6,000億円)規模の大型減税策が金融市場の混乱を招き、経済対策の主要部分は撤回を余儀なくされ、英国史上最短の50日弱での退陣に追い込まれた。

スナク氏が25日発表した閣僚人事は、トラス政権で大型減税策を撤回し、事態の沈静化に努めたハント財務相が留任。ウォレス国防相やクレバリー外相など他の主要閣僚も続投が決まった。また、ジョンソン政権下で副首相を務めた党重鎮のラーブ氏を副首相兼司法相に起用。トラス前首相の政権運営に抗議して辞任したブレーバーマン前内相を内相に復帰させた。

英国はロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギー高騰や記録的なインフレに直面している。スナク氏は就任演説で「われわれは深刻な経済危機に直面している。プーチンがウクライナで起こした戦争が世界のエネルギー市場を不安定にさせた」と指摘。トラス前政権については大型減税政策が金融市場の混乱を招いた点に触れ、政権運営で「いくつかのミスがあった」と認めたうえで、「直ちに修正作業に取り組む」と述べた。スナク氏は支持率で最大野党の労働党に30ポイント以上のリードを許している労働党の信頼を回復し、経済を再建する重責を担うことになる。

一方、政府は26日、31日に予定していた中期財政計画の公表を11月17日に延期すると発表した。スナク政権の経済政策が具体的に示される場として注目されていたが、英メディアによると、政府は実効性のある財政収支の改善策を検討するうえで、より適切な判断を下すための時間が必要と判断した。