日産自動車と仏ルノーは6日、資本関係の見直しで正式に合意したと発表した。日産に対するルノーの出資比率を現在の43%から15%まで引き下げ、両社が相互に15%ずつ出資する形となる。これにより、20年以上にわたりルノーが支配的だった日仏連合は対等な関係となり、三菱自動車を含む3社は新たな体制で電気自動車(EV)や次世代コネクテッドカーなどの開発を急ぐ。
日産の内田誠社長、ルノーのジャンドミニク・スナール会長とルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)、三菱自の加藤隆雄社長がロンドンで共同記者会見を開いた。発表によると、日産はルノーが設立するEV新会社に最大15%出資する。三菱自も参画を検討する。ルノーが株式の50%以上を保有する計画で、半導体大手の米クアルコムが新会社への出資を決めている。
一方、ルノーは保有する日産の株式28%をフランスの信託会社に移す。信託分については大半の議案で議決権が無効となるが、配当金などの経済的権利は引き続きルノーが維持する。ルノーが日産株を売却する際は日産の承認が必要で、日産を売却先候補の筆頭とする。
また、日産とルノーは中南米、インド、欧州でEV事業などの協業を推進する。欧州では三菱自もEV事業で協業を検討する。
日産とルノーは6日までにそれぞれ取締役会を開き、資本面を含む提携関係の見直し計画を承認した。両社は3月末までに新たな契約を締結し、2023年中に一連の手続きを完了したい考え。
内田氏は記者会見で「対等なパートナーシップが変革を可能にし、将来のビジネスチャンスに備えることができる」と強調。デメオ氏は「両社の関係を過去より良いものにする。日産との新たな取り決めにより、ルノーは相乗効果を維持したまま、より俊敏に行動できるようになる」と述べた。
日仏連合は1999年、ルノーが経営危機に陥った日産を救済するため、約6,000億円で日産の株式37%を取得したことから始まった。再建のため元会長のカルロス・ゴーン氏が日産に送り込まれ、工場閉鎖や2万人を超える人員削減など大規模なリストラを断行。「コストカッター」と呼ばれた同氏の手腕で業績は急回復したが、05年以降は伸び悩んだ。
ゴーン氏は役員報酬の扱いをめぐって18年に逮捕・解任され、経営が混乱した。19年にはルノーがフランス政府の意向を受けて日産との経営統合を画策し、両社の間に確執が生まれた。現在は事業規模で日産がルノーを上回るが、フランスの法律による制限で日産が保有するルノー株には議決権がない。こうした経緯から、ルノーとの対等な資本関係は日産側にとって悲願だった。